□月 ●日  No1845 違う意味で伝説


「二ッ岩 マミゾウ」といえば地元佐渡ではかなり知られた妖怪である。
この地方では彼女の武勇伝が数多く残されている。この八雲商事にはその手の情報が数多く入ってくるが
彼女に関しては違う意味での報告書ばかりが多く残されているといった印象だ。


彼女は金貸しである。昔は土倉という酒屋兼金貸しをやっていた。
金山で栄えた佐渡はお金のやりとりがとても盛んで妖怪までもがお金のやりとりを
やる土壌があったのである。 徳政一揆が起こったり打ち壊しが
起こったとき、彼女の土倉はいつも被害に遭わなかったという。金利がほかの土倉と比較すれば
とても低く、しかも貧乏人に多額のお金を貸さなかったからだという。


博徒に対しては特に厳しく当たっており、当時から信用能力という言葉を持ち出して、
お金を借りた経緯をきちんと確認していた。そういう意味で、八雲商事に出入りしている
借金取りの天狗とは少々違う金貸しである。 阿漕な天狗の金貸しと比較すると銀行に近い。


審査も配下の妖怪を利用した独自の物であるという。一般的な信用調査に加えて独自の捜査で
お金の流れをひとしきり確認してから融資を決める。
故に本当にお金が必要な人にお金が回るという話なのだ。


さらに言うと彼女はヤミ金融ですらない。きちんと法的手続きをへてきちんとした事務所を構えている。
彼女の居場所を調べようとしたら街のど真ん中でひっくり返った覚えがある。
実際のところすみかは昔と変わって無く、単に開発でそこが商業地に変わっただけのようだが
彼女はすみかを追われたわけでもなく、そこに地権を主張して大地主になっただけだった。
だから、ここで開発が起こってもそれほど大きなトラブルにはならなかった。
もちろん小競り合いはあったが。


彼女が八雲商事に向かったのはボスを頼ってのことだというが、普通に自動車でやってきたときは
唖然とした。普通に免許をとり普通に戸籍を持つ妖怪というのはそれほど珍しくない存在なのだ。