□月 ●日  No1868 幻想超音速


最近、空を轟音だけが駆け抜ける現象が起こっているのだとか。
バンという破裂音だけを残して幻想郷の高々度を飛び回っているらしい。
問題にならないのは、それがあまりに高い高度を飛んでいるようだということと
その姿をまともに目撃できている者が天狗しか居なかったことだ。


当然その姿は高速で飛行する鳥として新聞を賑わせたが、
結局誰も姿を捕らえることができなかったのでガセネタとして処理された。
ごく一部の真実を知る者をのぞいて。


大した話ではない。幻想入りとなって博物館行きとなった超音速旅客機を
霊能局に在籍していた妖怪が擬態。飛行テストをしていたのである。
ただの擬態ではない。当時の開発者が総出で集まり、構造的欠陥を改めた
本当の幻想入りした旅客機なのだ。


と、いってもこの旅客機やっぱり燃料を食って仕方ない。
擬態した妖怪自身の負担も凄いようだ。音速を超えるとやってくる空気の壁
ソニックブームが全体をきしませる。一歩間違えれば空中分解しそうな勢いだ。


そしてなにより最大の問題は最高速をほんの数分間しか維持できなかったことだ。
これは単純に幻想郷の面積の問題だ。飛行禁止区画まで端から端までの距離では
あまりメリットがないというわけだ。


ちなみにこの実験。妖怪がどこまで最高速を目指せるかと言うことで行われた
実験である。顕界の技術をそのままコンバートすることで効率よく最高速を
たたき出せるとあって、実験は概ね順調だ。
今回は音速の壁を越えることに成功したが、今後は宇宙空間をも飛んで
超高速移動を実現したいと研究者は胸を張っている。


ちなみに別の関係者の意見も紹介したい。
幻想郷から出るなと。


まあそういうことである。