□月 ●日  No1981 入り口


職業安定所。 
数年勤めた会社があまりに酷いブラックぶりと傾きぶりに辟易して会社を飛び出したものの、
次に行くはずの会社からは満足な連絡がなく、だいたい一週間が過ぎてしまった。
このまま何もしないというのも問題なので職業安定所へと足を運んだが、本当に仕事をする気があるのか
分からない姿をしている人を何人か見かける。


彼らは単に求職活動を行っている振りをしているだけの人らしい。
求職活動をしないと生活保護を得ることができないからだそうだ。
そんな人たちをかき分けて係員の人に話を聞いてみる。
横で自分よりずっと年上だった初老の男が一生懸命自分のことを話していた。
そんなことをしたところで多分与太話としてしか聞いて貰えないだろうなと思っていたので
単刀直入に「良い会社はありませんか」と尋ねてみた。


「それなら」と係の人から会社の資料を提示される。
その中でも妙に大きな会社の資料が目に止まった。
この会社について係員のコメントを貰ってみる。ネットで情報収集するよりは
こういう人の話を聞いた方がいいことは知っている。なぜならここに登録する会社は必ず
職業安定所の職員と話をしていて生の情報を知っていることが多いからだ。
と、知り合いの人に聞いたことがあった。


その内容はというと、向き不向きが極端ですぐにやめる人と長く勤める人がいるという話。
商売としては販社ということで結構安定しているという話を聞く。
多少大変そうな話は聞くが自分が聞く限りは問題なさそうだ。


すると係員の人、「そうだ」とばかりに謎の機械を持ち出した。
ちょっと見は何かの計測計 ガイガーカウンターにも似ている。
すると係員の人、嬉しそうな顔をして必要な書類を書類を用意するように指示してくれた。
何を調べたのかは分からないがさい先は良さそうだ。


ジュースを飲もうと外へ出ると、前髪前線が後退した丸渕眼鏡のおっさんが電話をしているところが
目に付いた。 どうも興信所に人の経歴などを調べさせているようだ。前の会社でも
似たようなことがあったから別に心配するほどでもない。
でも最近はずいぶん細かいところまで調べるものなんだなと思った。