□月 ●日  No2008 誰が維持するのか


顕界の電力不足に対して幻想郷に学ぼうという機運が高まっているらしい。
はっきり言って幻想郷の電力インフラはとても脆弱だ。交流電気を利用しているものの
電圧は不安定で、電気事業法にある範囲なんて容易に超えて電圧が下がる。
だから当然香霖堂のコンピューターが動くわけがない。


我々が利用している端末も概ねPDAである。大量のバッテリーも所持しているし、太陽光発電用の
パネルを持ち歩いている者もいる。このパネルについては最先端のものを利用しているし、
利用するしか無いとも言える。


そもそも幻想郷に満足な数の電化製品があるとは言えない。電化製品がなければ、
当然電力消費も少ない。大半の電力は現状で工場などで利用されている。
電力を安定供給すれば、電気を使う機運が高まるかも知れないというのが例の神社にいる
おねえさんだ。彼女は米帝のエネルギー企業の模倣を狙っているようだ。
彼女たちは想像以上に勉強家で、幻想郷のウイークポイントがインフラ廻りと知るや
それらに対して働きかけを行ってきた。


だが、実際には発電設備さえどうにかすればいいほど幻想郷は単純じゃない。
送電するためには大量の電信柱や地下埋設ケーブルが必要で、そこから発生する電磁波は
妖怪達に多少なりとも影響を与える。
長距離に電力を運ぼうとするなら変電所とトランスが必要であり、その額は相当のものとなる。
そもそもどこが工事するのかだって怪しいものだ。


つまるところインフラというのは建設するよりも維持するのが大変なわけである。
その点を考えないで、発電所だけ作れば問題はないと思われると頭が痛い。
せっかく地下に核融合発電システムを作っても色々と電気が届かないのは結局その辺が
原因だったりする。 


そもそも、それだけ電化できるなら八雲商事の庁舎も少しは便利になってしかるべきだ。