人間という生き物はどうしても寿命という概念から逃れることはできない。
これは生命が真核生物になった時、性別の概念を得た瞬間から始まったと言われる。
もしもこのルールを破ろうと考えるのなら、それは自ら人間であることをやめる必要がある。
それを「死んだ」と呼んでも誰も文句は言わないだろう。
細胞は遺伝子複製をしたとき、どうしても遺伝子の端部の複製に失敗する。
失敗した部分は脱落することになる。 そのため遺伝子は脱落しても実情報には影響を
与えないようにするため、その部分を同じ情報で固めている。
これをテロメアと呼んでいる。
テロメアがなくなって、遺伝情報にダメージが行くと、遺伝子の番人
P53が遺伝子が修復不可能なほどに破損したと判断 細胞を自死させるのである。
こうして細胞は寿命を迎える。
細胞を破壊する要素は色々ある。
酸素呼吸と引き替えに、人間は活性酸素で遺伝子が破壊されるようになった。
その数一日に数億箇所。 活性酸素は呼吸の他にも宇宙から降り注ぐ放射線、自然界に
存在する放射性物質もある。放射能は人体に含まれる水に当たると活性酸素へと
変貌する。
もちろん活性酸素撫で遺伝子が破壊されても、P53などが働いて
遺伝子は修復されることになる。遺伝子が破損して手に負えなくなったら
やはり細胞は自死することになる。
これが生き物のの仕組みだ。
自死できなくても、免疫細胞がきちんと後始末する仕組みになる。
こうして細胞の総数は減っていくのである。
脳細胞や心筋細胞は一度生まれたら増えることがない細胞と言われる。
こうした細胞の複製も問題となる。心筋細胞に至っては鼓動できる回数に限度があるのだ。
回数オーバーになれば停止してしまうだろう。
魔法使いとはこうした問題と向き合いながら、且つ人間にとって最適な肉体環境を
取捨選択し、寿命の問題を解決する。
そもそも彼らを支えるテクノロジとは何なのか。
人の短い一生の中で現代科学でも解明できない問題を解決する方法は一つ。
それは、月面からテクノロジを奪うことである。
魔法使いはいわば人間が月面人になろうとしたプロセスで生まれた
存在と言えるかも知れない。
天人もいるしね。