□月 ●日  No2230 コネがあるってだけですし


最近三馬鹿どもからの扱いが妙に恭しくなって気持ちが悪い
一番怖いのは普段口が悪いはずの幽霊までもが私に丁寧語を使ってくる。いったい何が起ころうとしているのか
理由はわりと三人組のうちの一人からあっさり聞けた。 月面人の一人を紹介してくれというものである。


そもそも彼らは何故、このような長い寿命を得ようと考えたのか。
それはこの当時は色濃い月の都の干渉のためだったと言ってよい。
所謂島国だったこの地域が中華と呼ばれた地から逃れてきた理由もそこにある。
月面人のバックアップがあってこそ我々は大陸に挑発的な態度を取ることが出来たともいえる。
月面人の力があれば大陸を制圧するのは造作もない。そう思われていたのだ。実際には些か微妙なところである。


しかし、彼らが長い寿命を得ようとするのを月の都が許すわけもなく、太子様がお隠れになったあとの
家族たちの運命はそれは悲惨なものであった。結果的に起こったクーデターによってこの国は安定したと
言っても良い。
そもそも、逃げてきたとはいえ大陸からやってきた娘を信用してよいのかというのは大きな問題だった。
延々と眠り続ける太子様を見れば、仙人が太子たちを騙して月面との関係を悪くしたのではないかと
思っても仕方ない。その事情を知っているのは妻とその血縁の者 そして物部の者である。
故に、残されたものが行ったことは至極単純だった。 太子たちをパージしたのである。


ここで話がややこしくなる。事情を知らない者たちにとってこういった政変によって殺された者は
怨霊になると信じられていた。半分本当で半分嘘と言える話である。
どうにかして、この問題をチャラにしようと考えるのは当然のことである。


私は冗談半分で月面人と引き合わせるかと提案したが、なぜか遠慮された。
私の推測だが、その手のことは月面人にとってはあまり重要なことではないと考えている。
月面人は想像以上に物事をマクロでみており、かの中華のようにメンツを気にしてはいない。
おそらく彼らは中華のようなメンツにこだわる文化が月面人にもあると考えているのだろうと
考えられる。


そんなわけで、三馬鹿からは一目置かれるようになったのはいいが、立場が色々怪しくなったって
だけであまり内実は変わってないってことは言っておきたい。