□月 ●日  No2229 ケイ素妖怪 冴月麟


冴月麟 八雲商事に所属している謎の多い妖怪である。
妖怪ではなく神霊の類ではないかという説もある。
彼女の姿は一定ではなく、ある時は壮麗な娘だと思えば、ある時は百貫を超えるような巨体を駆る娘の姿をする時がある。
その実態はパラサイトであり、彼女の実態は誰もつかめない。


彼女にパラサイトされた者は人間妖怪を問わず驚異的な身体能力と体術を身に着けることが出来る。
自分の知識を寄生先の脳に瞬時にコピーし技能を転送することができるようだ。
この手の能力は付喪神にもあると言われる。インターフェースさえあれば化け傘でも似たようなことが可能であろう。


彼女にパラサイトされた妖怪や人間は冴月から情報をコピーされるプロセスで違う能力を発現する場合がある。
地霊殿に住む地獄鴉は膨大な熱量を呼び出すことができるようになり、紅魔館に住む銀髪の娘は空間湾曲から時間停止に昇華したと
考えられる。 現在パラサイトされている人間らしい人物もパラサイトが外れれば違う能力を発現させられると思ってよい。
参考になるのはカクタスカンパニー社所属のVT-01である。社の資料によれば、本来なら対応できないはずの動きや
部品損耗を無視した機動が可能になったと書かれている。


彼女の本体は一説では月の都にあるとされる。
また、行動挙動から月面で生み出されたケイ素生命体ではないかという説もある。
ケイ素生命体と呼ばれる理由は、コンピューターにおける情報の世界を可視化した時に必ずと言ってよいほど
現れるまるで八咫烏のような姿のノイズに起因する。


パラサイトされて切り離された妖怪や人間たちが冴月の記憶をもったままであるという証拠は今のところない。
一つ言えるのは銀髪の娘が最初の異変の後そのまま紅魔館に住み込んでいるという事実だ。
これが何を意味するのか。


写真を見るたびに想うのである。彼女はどの姿であの館を出たというのだろう。