□月 ●日  No2253 言ってはいけない


幻想郷で仕事をしてどうしても慣れないのが、ここの住民の命の軽さではないかと思っている。
これは幻想郷がなぜ人口爆発しないかという疑問への回答ということができるだろう。
食糧面ではそれなりに生きる分は豊穣のカミや我々によって担保されているとはいえ、幻想郷住民の平均寿命は
驚くほど低い。それもそのはず、成人できる子供の数がとかく少ないのだ。


そのため遊んでいたり上白沢の塾で子供が見かけなくなっても基本的にそれを指摘するのは禁忌だ。
なにしろ幻想郷住民は予防接種の類を受けているわけでもない。これがあるのとないのとで成人できる
子供の割合が大きく違ってくる。たとえば幻想郷の子供たちにとって麻疹はかなりクリティカルだ。
もちろん薬屋の薬を使えば治るだろうが、そもそも薬屋を呼び出す頃には概ね手遅れだ。
第一体力を回復させるにも点滴だって不足している。薬屋が成り立っているのは幻想郷の医療が
想像以上に遅れいているからであり、現代の医療環境を再現するとなれば彼女の体はいくつあっても
足りないはずだ。


そんなわけで、幻想郷で葬式なんてものは割とよくやっているし、人を呼んでどうこうっていうのも
よっぽど成人した人ではないとやらない。子供が死ぬのは割と日常茶飯事だからどうしても
兄弟は多くなる。 当然そこから妖怪が生まれる素地もできる。妖怪が子供の姿をしていることが多いのも
結局は子供の死亡率が高いからという嫌な研究結果もあるくらいだ。


そんなわけで、幻想郷にいるとああできないかなあと思ったら、寄付金集めるならこっちに
金回せばいいのにとか思うわけだが、人が増えて養う人が増えればそれはそれで回転できなくなるので
結局のところジレンマなのである。