□月 ●日  No3008 意外と多い


 自分の娘を探してくれという依頼。幼少の頃、連れ去られたというのだが
 それが実の母親と聞いて、いやそれはうちの管轄ではないのでと言いたかったのだが
 結局受けた。これを受けないと来月の家賃が危なかったからだ。


 結果的に自分の専門だったから良かったのだが、考えてみれば依頼者も自分がなにを専門に
 しているのか理解した上で頼んできたのだ。
 

 さて、実は娘を見つけるのは割と容易だった。容易すぎた。学校もすぐに特定できた。
 何一つ隠している形跡がない。依頼者はなぜか会えないというわけだが
 原因は調査後4日くらいで分かった。
 この娘をガードしている奴がいる。それも自分があまり触りたくないところだ。


 しかもよりによってそこの人間に見つかってしまった。
 かつての同僚でもある、いや私と一緒に仕事をしていたこともあるというべきか。
 その日は世間話をして帰ったが、明らかに迷惑そうであることは間違いないだろう。
 これ以上触るなという警告付きだ。


 この状態で隠し立てすると依頼人が危険なので、自分の目的を支障がない程度に話す。
 あくまで依頼人はこの世界で普通に暮らしてもらうためにあえてそうしているのだと
 云うのだがそれはエゴというものだろう。本来ならそういうものではない。
 皆で支えあうものではないかと。


 だが、私はこれから決断をしないといけないようだ。娘はもういないと伝えるべきか
 それが問題だ。半分本当で半分ウソである。