[Next]□月 ●日  No3032 来訪者


 化け狸の紹介である妖怪の依頼を受けることになった。
 この女、雷子という名づけ主を見てみたい系の妖怪は傍から見れば誰が見ても普通の女に見えるだろう。
 赤い髪も染めたと言えば通用する現代なら。


 彼女の依頼は、元の持ち主を調べることだそうだ。
 彼女は元々道具であった。所謂付喪神と言われる種族であろうと思われる。
 道具として自我を持つことができるケースは数あるが、今回のケースもやはり楽器からだった。


 実は楽器が付喪神化することは別段珍しくないのである。
 特定の道具に愛着を持ち、いや執着を持ち続けると一定確率でなるが
 このテのものは製造段階からそういう風に作られるのだ。


 早速、相手のことを確認するのだが、これがかなり難しい。
 というのも相手は鳴かず飛ばずのミュージシャンで活動期間こそ長いが食べるまでは至らない
 というよくある話でその人物の消息を探す依頼は結構あってある程度ノウハウ化されているものの
 かなり面倒な依頼なのである。


 とりあえず必要な情報を集めるが案の定すべてが断片的でかなり厳しいことがわかった。
 しかも彼女は本体を晒そうとしない。
 おかげで今回の依頼はかなり難しいことになりそうだ。それは即ち居候ができることを
 意味している。