■月 △日  No345 冥界帰省ラッシュ


お盆と言えば幽霊たちの帰省ラッシュである。 
お盆は地域によって時期が違うがこれは単純にラッシュ分散のためらしい。
三途の川が上り下りでごった返し渋滞が生まれる。
さながら顕界の高速道路のようなものだ。


墓場に幽霊はあまりいない。 
妖怪たちがお供えされた食べ物目当てでやってくるとか
ロケーションのためにやってくるとかそんな感じだ。
お盆になると墓場も幽霊でごった返すのかと思ったら、しみったれた場所には
いたくないらしい。
どこかの霊能者が墓場のことをカルシウム畑とか言っていたが、言い得て妙である。


霊能局ではこの世を去った政界の大物を呼び寄せたりととても大変らしい。
先日呼び寄せた人物は地獄にいることは判っていたがなかなか帰還に応じなかった。
冥界に行って原因がわかった。 
彼は針山地獄にいたのだが針山の痛みが「くせ」になったため
戻る気が失せたというのだ。 こうした変態は如何ともしがたいものである。


こんなときに白玉楼に行くと、人混みに揉まれて何倍も疲れる。
本当は行きたくないのだが魂魄が博麗神社に張り付いているため、
こっちに仕事がまわってきてしまうのだ。相変わらず食い物の種類ばかり多い。
そのくせ衣服が少ない。
冥界でも衣服のバリエーションは多種多様なのに、ここのお嬢様は
あまり代わり映えしない。
御庭番の女の子に事情を聞いたら、ほかの服はサイズの融通が利かないという。
確かにお嬢様の服は極端にゆったりしている。まるでマタニティドレスである。


一時的にふくれたお腹を目立たないように収納する衣服 これが白玉楼の
お嬢様が着る衣服の正体なのだ。
もっともふくれたお腹はものの数時間で元に戻る。 便利な体である。