○月 △日  No398 花火で空はとべるのか?


気まぐれで我が儘なヴァンパイアの主人がたくさんの花火がほしいとの注文が
舞い込んだ。 花火と言えば、ノーレッジ女史による炎の魔法で十分事足りそうな
ものなのだが、突っ込んだらメイド長にのど元を斬られそうなのでやめておいた。


季節外れの商品だけに入手困難だと思ったら売れ残りの花火を安く仕入れる
ことができた。 しかしこれら花火をそのまま出荷するわけにはいかない。
花火には結界の外の風俗を連想させる飾りや絵が描いてあるからそれらを
手作業で剥がしてから送らないといけないのだ。
まるで内職のような有様である。
納期がタイトなため、みんなでちくちくと花火を加工する。
手先が器用な岡崎が次から次へと作業を終わらせる中、手先が不器用な朝倉が
花火本体をやぶいてしまって、キーキー五月蠅い。


絵をはずした花火の袋の中に乾燥剤を投入して急いで紅魔館に運んだら
メイド長が難しい顔をしていた。 なにやら「これで本当に飛ぶのか」と
言っているように聞こえる。 問いただしたらはぐらかされたが
大体やりたいことは見当ついた。


時間を停止しながら着火すればいいとか色々独り言を言っているのは微笑ましいが
おねえさんそれ無理ですよ。と言いたい。
いつまでも受領のサインを書いてくれないので待ち惚けしていたら
奥からノーレッジ女史がやってきて、「それは粉の火薬だから駄目。液体じゃなきゃ」
とかやっている。 間違ってはいないが根本的な部分で誤っている。


もしかしてこの花火用済み?
どっと疲れが押し寄せて花火を積んだリヤカーにもたれこんだら、メイド長が
そっと受領書にサインをしてくれた。
そしてそのまま秋祭りの会場に持って行ってくれと言う。
幻想郷の秋祭りの目玉にしてくれというのだ。 
この辺の切り替えの早さは流石メイド長といったところか。


今度は燃える水の注文が来そうだが、おそらくノーレッジ女史が自分でつくろうと
しそうな気がするのでこれ以上は聞かないことにした。