○月 △日  No399 幻想郷の新学期


この時期になると、荷物の中に教材が増える。
実は幻想郷では秋が進級進学の季節なのだ。


かつて明治時代の学校は9月が進級進学の季節であった。
これはお手本になった米帝の学校に倣ったものである。
結界の外の世界では進学の季節といったら4月であるわけだが、
そうなった理由を紐解くとこうだ。 


明治時代、若者は大学に行くと兵役が免除された。
大学は将来の官僚の養成所だったからだ。
大学の始業は4月だった。だけど一般の学校や士官学校の類は9月始業である。
頭がいいやつはみんな4月に大学に進むため、士官学校の層が薄くなるのを恐れた
軍部が圧力をかけて4月に始業が統一されたというわけだ。
幻想郷では明治の中期ぐらいに結界で完全に下界と分断されたため
制度がそのままの形で残って現代に至っているというわけだ。


上白沢の塾にも大量の教科書やら鉛筆やらが届いた。
幻想郷では夏期休暇もちょっと内容が異なる。
夏は農業の繁忙期でもあるので、子供たちはこの時期遊ぶよりも
親の手伝いをすることが多い。
外の世界の夏休みとはかなり違うのだ。


しかし、そんな幻想郷でも変わらない風景は
宿題を忘れる生徒と、本当に角を生やした先生こと上白沢の姿である。
本気ではないとはいえ頭突きされるとかなり痛そうだ。
宿題を忘れた生徒はその場で居残り夕方まで残った宿題をやらされる。


日が落ちると妖怪たちがみんなで子供たちを護衛しながら
家路に向かう。 私も納品がてら付き合わされる。


だが餓鬼どもよ。 私は声を大にして言いたい。
私は「おじさん」じゃない「おにいさん」だ。
この辺のセンスも結界の外と変わらないようである。