■月 ○日  No401 香霖堂の雨漏り


香霖堂に商品を届けると、雨漏りがしているのを発見する。
たまたま来ていた別の妖怪が、修理できないのは香霖らしくないと
言っていたが雨漏りほど難しい修繕工事はないのだ。


物事の素人はどうしても物事を簡単に捕えてしまうきらいがある。
これは仕方のないことであり、それを説明するのは自分の仕事だと認識している。
雨漏りの場合は、特に実際に漏れている場所の真上から漏れていることは
まずない。 別の場所で漏れていて伝ってきているのだ。


久々に視覚移動のカードを使い、屋根裏から水が漏れている場所を特定する。
ところがこれで終わりではない。 屋根材の下には防水紙が貼られていて
そこの隙間から水が漏れているので、実際に漏れている場所はまた別の
ところにあるのだ。
雨漏り修繕はこの追跡作業の連続である。


横で見ていた妖怪の少女も驚きの表情でひとつひとつ追跡される
雨漏りの場所に感心していた。
香霖堂の図面を借りて、予想箇所をに丸印をつける。
あとは屋根屋さんに依頼して修理してもらうことにする。


香霖堂は無茶な増築を何度も繰り返しているため、接合部の防水処理が
毎度甘い。 せめて規格物の建材を使用してくれと頼んでいるのだが
自分が気に入った物を組み合わせて作っているのだから雨仕舞いなんか
まるっきり考えていないのだ。 素人考えは恐ろしい。


大切な春画がぬれたらどうするんだと抗議したら、絵が黒いビニールに包まれて
置かれていた。 なんか時代錯誤のような気がしたが、考えてみると
メイド長や霧雨のご息女の目にとまったら店ごと破壊されるので
当然と言えば当然なのかも知れない。


中に魂魄と玄爺の絡みと書いてある袋を発見する。 とりあえず無言で
ビニールを破って外に放りなげた。
さっきいた妖怪がダイビングキャッチしてそのまま森の中に消えた。
燃やせば良かった。