■月 ○日  No433 幻想郷と疫学防御


幻想郷現地で風邪をこじらせてしまった。 
幻想郷で病気になると、治癒するまでは外の世界に戻れない決まりとなっている。
会社に休みの連絡をしてとりあえず一日寝ることにした。


幻想郷における疾病対策がここまで徹底されているのには理由がある。
それは博麗大結界が現在の姿になったばかりの話らしい。
当時、隣国でペストが大流行し多数の死者が出ていた。 
我が国にもペストが大流行するのではないか、関係者は戦々恐々していたらしい。


ペストは海を隔ててまだ進入していないと思われていた。
しかし、ペストは進入していたのである。
それはヨーロッパからやってきた妖怪たちの着衣にいたノミを媒介にしたものであったという。
救いは事実上隔離された土地だったことである。 これ幸いに幻想郷が事実上閉鎖された。
幻想郷への物流が完全に途絶えた瞬間である。
ペストは妖怪にも感染して多数の死者を出したらしい。特に猫型の妖怪や兎型の妖怪がそうだ。
肝心の媒介者はペストに対して遺伝子レベルでの耐性を持っていて無事だった。


特に美鈴女史がやってきたときは大騒ぎになった。 何しろペスト大流行中の
場所からやってきたのだ。 当時は追い出すべきかどうか本気で悩んでいたらしい。 


しかし奇跡は起こった。 
ドンネル先生と言われる人物がペスト菌を発見し、ついに血清をつくるに至ったのである。
これは幸運な出来事であった。
この事件は、龍神様の怒りとして記録に残ることになった。
うちの会社が検疫部という部署があるほど幻想郷における疫学防御が徹底されているのは
過去の苦い経験によるものなのだ。


明羅女史と看護婦河童がやってきて薬を処方してもらった。
薬に関しては外の世界の最先端の薬が利用できるのはありがたい。
明羅女史は「自称現人神に続いてお前もか」と毒づいていた。