紅葉もそろそろ見頃になってきて絶景かなとお茶を飲みながら
まどろみたいこの頃であるが仕事は今日も続く。
この時期になると畳のゴザが霧雨店に並ぶようになる。
畳の表面のい草の部分と言えばいいだろう。
このゴザを納品するときは汚れてよい服装でないといけない。
い草を保護するために泥が塗られているからだ。
納品が終われば体中泥だらけとなる。
幻想郷の畳職人は妖怪が多いらしい。畳の基材となる藁製の床に巨大な裁縫針を
通すのだが普通の人間ではあまりに重労働なのだ。
幻想郷の外の世界では畳はミシンやタッカー止めするのが半ば常識となっている。
もちろん人間の職人でも畳を縫うことはできるが、基材の厚みはなんと
50ミリもある。 生半可な力では針を通すことすらままならない。
普通の人間なら一日に8畳もできれば上出来の畳加工を妖怪たちは倍の早さで
縫ってしまう。 まさに幻想郷ならでは光景だろう。
畳を敷いたらまずやるのが御神酒を撒く作業である。
美人の妖怪がお酒を口に含んでふっと吹きかけるのだ。 豪快である。
これは、お清めの意味もあるが消毒という意味もある。
結界の外でも無水エタノールを吹き付けてから拭きするのが有効だ。
このい草、実は我々が納品すると赤字になる。
い草も最近は外国産のものが増えている。 このい草が農薬をふんだんに使っている。
こんない草を幻想郷に持ち出すと人間は平気でも妖怪たちは中毒症状を起こす。
朝倉の話ではケロちゃん帽のカミ様にはかなりきついらしい。
そんなものだから、やたら高価ない草を使用する羽目になるのである。
毎度のことなので赤伝を切るのは慣れているが、せめて幻想郷で自給してほしい。
というわけで例の神社のおねえさん、値段をまけろと言って一時間も粘るのは
やめてください。