■月 ○日  No443 けじめの付け方


妖怪と人間が恋愛するのはいろいろな試練が伴うものだと思う。
寄生虫に感染する者もいれば、自分だけ老いていくことに耐えられない者もいる。
こと幻想郷に関しては人間でありながら妖怪との境界が曖昧な者もいて
極端に寿命が長い人もいるから始末が悪い。


その日の依頼は隙間妖怪だった。 対応したのは朝倉。
突然の事故で夫を亡くした妖怪がどうにか最後の別れをさせてくれと頼んで
しつこいと言う。 どういうルートか知らないが隙間妖怪に直訴したらしい。
本人にとってはいい迷惑だろう。


最後の別れができるチャンスは中有の道だが、実際問題そこを歩く
たくさんの死人の中から、本人を特定してその場まで連れて行くのは至難の業だ。
三途の川まで到達されたらこちらには追跡する手段がない。
それに妖怪たちは様々な方法で自分の心にけじめをつけるのが通例だ。
人通り泣きじゃくる者、お酒におぼれる者もいるのだが
今回のケースはレアケースである。 無茶と言って良い。


ところが朝倉はこの件を安請け合いしてしまった。
しかも自ら乗り出すと言うのだ。 この反応には私もびっくりした。


「何をするかわからない」と冴月に言われて同行することにした。
同行するに先立って、朝倉から眼鏡をもらった。 真の姿を映す眼鏡と言う。
かけてみてびっくり、中有の道はまるでB級ホラー映画のような様相になっていた。
中有の道ではその人間が一番充実していた時の姿が映し出されるが
眼鏡をかけると死んだときの年齢の姿で探し出せるらしい。 これは便利。 


ほどなくして亡くなった人と妖怪はつかの間の再会を果たした。 
男が意味消失する前のわずか10分ほどであったが。


朝倉はあとでこってりとボスにしぼられたがその顔は晴れ晴れとしていていた。
魂魄が「朝倉は敵討ちをしたかったのだ」と達観したことを言っていた。