△月 □日  No454 幻想郷は冬支度


幻想郷の冬支度恒例と言えば松の木に藁を巻き付ける作業であろう。
今日は巻き付ける藁の納品日である。
結界の外でも同じようなことが行われているが、そこは幻想郷である
ちょっとばかりやり方が違うのだ。


寒さに凍えた虫たちは藁に潜ってとりあえずほっとする。
その藁を通常は引きはがして燃やすわけだが、幻想郷の場合は
もっと暖かい場所に移動して冬を越してもらうことになる。
無駄な殺生を避ける意味合いもあるが、やはり虫妖怪に配慮したものといえよう。


風見女史も冬支度で大わらわである。 綿帽子を飛ばしたり、
種がきちんと鳥に運ばれるかを確認したりもする。
その中でも冬の衣装を選ぶのは大変である。 
とにかく風見女史の寝間着に対するこだわりは物凄い。 
風見女史の担当を言い渡されたら一週間は彼女のために時間を喰われることになる。
寝間着だけではなく、布団や枕まで新調する。 


ベッド屋から彼女の体系に合わせてベッドをあつらえるのだが、そこには
最新の科学が投入される。 加圧センサーを利用して重心の動きを確かめて
専用のマットレスをあつらえるのだ。 この加圧センサーは家具屋メーカーから
借用した物である。


今年は桃色の大人びた外見に似つかわしくない寝間着を選んでいた。
ここで安心してはいけない。 いざというときのために同じ寝間着のデザインでも
複数の色を用意しないといけないのだ。 ああメンドクサイ。


風見女史の機嫌を損ねたらそれこそ一瞬で消し炭になることは間違いない。
だが、すべての衣装が決まると物凄い笑顔を見せる。
それがなんとも美しいと言うより厳かな雰囲気を感じるのは気のせいだろうか。
寝てしまった風見女史に異変が起らないかを暫く観察してから仕事終了。
寮に戻ればこっちは見事なまでの万年床である。 そろそろ布団を上げなくてはなるまい。