△月 □日  No464 紅魔館のひとたちとつきあいたくない


よく勘違いされるのだが、私は紅魔館の面子とはお客様とは思っていても
知り合いではない。 仕事の間柄としての伝手はあってもプライベートの
繋がりは一切無いと思って間違いない。


それなのに私には何度か、紅魔館の門番やらメイド長やらノーレッジ女史やら
なぜか図書館勤務のデーモンたちまで紹介してくれと言われる。
やんわりと断ると、自分だけで彼女たちを独占するのはずるいと言われる。
そんな時"お前が代われ"と言いたい気持ちで一杯になる。


門番を除き、紅魔館のひとたちは気むずかしく気まぐれでこちらの予想したとおりの
反応を示してくれない。 道理を通そうとしてもメイド長に至っては
ヴァンパイアの主人の意志が最優先だから余計におかしくなる。


個人的な感想であるが、基本的に妖怪たちと話すときはとても疲れる。
所謂ジェネレーションギャップと呼ばれる感覚の違いに襲われる。
常に言葉を選んで会話しないといけないのだ。
こちらが話したことも相手の反応をよく見て、少しでも詰まったら
即座に言い換えないといけない。
コミュニケーション不全になれば下手をすれば殺される。


先日メイドたちが「がんけ、がんけ」という言葉を発して
首を傾げたことがあったが調べてみれば「崖」が訛ったものだった。
これが毎日のように続くのだ。 紅魔館のひとたちとプライベートで話しなんかしたら
こちらがつぶれてしまう。


自分は大丈夫だと言ってメイド長にアタックした奴は
かなり酷い目にあって阿礼乙女のインタビューで色々と恨み辛みをぶちまけた後
退職してしまった。 戻ってきた時は寝たきり状態だったからよく
生還できたものだと思う。


ケロちゃん帽のカミ様も久々に話す訛り言葉に随分と困った顔をされていた。
自称現人神が英語の単語帳みたいなものをつくって幻想郷の言葉を必死に覚えている。


そんな紅魔館の面子からは今までの担当者の中では幾分マシという評価をいただいている。
これ以上の評価は期待する気もないし、親密にはなりたくないというのが本音である。