△月 □日  No465 幻想郷の交通事情とちょっといい話


幻想郷でよくある出来事といえば、空飛ぶ妖怪同士の接触事故であろう。
主に高速で飛ぶことが苦手な妖精と妖怪が出会い頭で衝突するケースが多い。
妖精は吹っ飛ばされてもすぐに復活するのであまり問題にならないのだが
これが妖怪同士ともなると色々と面倒なことになっている。


一応いくつかのルールがあるらしい。 たとえば下降する妖怪優先というものがある。
またちょっとした速度規制もあるらしい。この規制が適用されるのは
高速飛行が可能な天狗たちで、一定高度に達するまでは高速飛行しては
いけないことになっている。
これは低空時に高速飛行したものならそれによってまき散らされる風で
民家にや森林に被害が発生するからだ。


妖怪同士がもしも出会いがしらに衝突するとどうなるか
大体はスペルカードルールに基づく決闘になるようだ。
しかし大物妖怪ともなれば、決闘ではなく注意で済むようだ。
風見女史に衝突した妖怪が、にっこり微笑みかけられて逃げるしかなかったという
話も聞いたことがある。 こわいこわい。


では妖怪と人間が衝突するとどうなるのか こんなことがあった。
霧雨店のお客様の中にいつも食料やら日用品を定期的に買い求める綺麗な妖怪がいる。
その量はおおよそ妖怪が食べる量ではない。
不謹慎であるが後をつけてみたら、ある家に買ったものすべてを渡していたではないか。
近所の人に話を聞くと、その妖怪が何かの拍子で墜落したときに
この家の男に運悪く激突し、妻と子供二人を残して命をなくしたらしい。
そのためこの妖怪は子供二人が成人するまで日用品と食べ物を届け続けているという。
そのことを朝倉に報告したら古くからの友人だそうで最近色々と相談を受けているらしい。
その日は彼女なりの償いなのだろうと思っていた。


しかし今日になって朝倉から、その妖怪に薬を届けるように依頼された。
中身は抗生物質だという。
幻想郷に持ち込んで問題ないのかと思いつつも現地に到着して疑問は氷解した。
なんとその妖怪が花嫁衣装に身を包んでいたのである。 
そしてその相手はもちろん成人した子供であった。
この薬は感染症対策のためだったのだ。 


久々になにか胸が熱くなる思いをした。