△月 □日  No466 味覚と嗅覚を鍛えましょう


幻想郷で生き残るにはまず、味覚と嗅覚を研ぎ澄ますことだと思っている。
これは私が幻想郷に入る新入社員に真っ先に教えることだ。
この話を聞くとたいていの人は目をぱちくりさせる。


幻想郷の食べ物には賞味期限なんてものは存在しない。
夜雀が食べ終わった串を再利用したって誰も文句は言わないし
変な話、一度店頭に並べたお菓子が再度並んでいたっておかしくはない。
賞味期限の概念はあくまで結界の外での話である。
よって胃腸の弱い人は胃腸薬必須もしくは幻想郷現地では
寮以外の場所ではものを食べないのは基本中の基本となる。


幻想郷の一部地域では水道も満足に整備されていない。
水はおかめに入れて煮沸してから飲むのだ。
もっとも最近はその辺もだいぶ改善したようである。
私も調味料セットと一緒に胃薬を忍ばせている。 私の場合は
持病の十二指腸潰瘍の絡みもあるので薬の持ち込みが容易に許可されるのだ。


困るときは配達先で食事を振る舞われたときである。
断るわけにもいかないので意を決して食べないといけない。
その後どうなるかは正直、保証の限りではないのが実情だ。
里香女史や明羅女史は、「あなたがひ弱なだけだ」と言って馬鹿にして
とりあってくれない。 自分の身は自分で守らないといけないのだ。


うちの同僚が紅魔館でメイド長の手料理を食べられたと言って自慢していた。
するとルーコトがその同僚を後ろから羽交い締めにして運び上げてしまった。 
検疫部からの命令で吐き出せと言うのである。
メイド長の創作中華はそれなりに美味だが、妖怪たちを基準とした火の通し方を
しているので我々が食べると、恐ろしい事態になる場合がある。


この同僚、せっかく食べた食べたご馳走を胃の強制洗浄で強引に
はき出す羽目となった。
あとで吐瀉物を検査したら、まあいろいろと食中毒を引き起こす細菌類が
多量に見つかってみんなで顔を青くすることになった。
幻想郷はこわいところです。