△月 □日  No467 貴金属輸送


幻想郷からの注文で困るものの筆頭にあげられる物と言えば
貴金属類であろう。高価で予算を一気に消耗する存在だ。


貴金属類を運ぶときは基本的に二人一組で行動する決まりとなっている。
たいていの場合奪おうとする輩が現われるからだ。
今日一緒に同行するのは冴月だった。 こういうときに彼女の冷静沈着な
行動はとても頼りとなる。


最初の襲撃は妖精たちだった。 こちらの視界を奪って怯ませた隙に奪う
作戦だったようだが、冴月には全く効いていないようだ。 人間はごまかせても
冴月の目はごまかせなかったのだろう。 数分も経たないうちに三匹の妖精が
折り重なるように気絶していた。


次に現われたのは隙間妖怪だった。厳重に梱包されているはずの箱に隙間を
開けて中の宝石類を物色している。 結局、いくつかの宝石を自分のところに
届けるようにと言って帰ってしまった。隙間妖怪もやっぱり女の子だと思う。


そしてここからが厄介者、霧雨のご息女と人形遣いのアリスが現われた。
どこから聞いたのかは知らないが、宝石を奪いに来たようである。
着地するなり、ご息女がいきなり宝石をよこせと言ってきた。 強盗である。
その傍らで必死に謝っている上海人形の姿を目にした。


冴月は嘆息して懐から何か綺麗なものを取り出した。 
価値のある物だからこれで勘弁してくれという。 
宝石とは違う光かたに霧雨のご息女も興味を示した。
私はプラスチックで作ったイミテーションを価値のあるように一芝居打ったら。
材質の価値なんて分からない霧雨のご息女はおおいに満足して帰ってしまった。
危機は去った。


この宝石は誰に届けられるのか? それはとある洋風の建物である。
そのお客様はあの人形遣いのアリスだった。 
ある人にプレゼントとして渡すためにずっと前から取り寄せていたらしい。
お金は香霖堂に払うことを伝えた上で本日の仕事は終了である。
冴月が渡した宝石を香霖堂で鑑定してもらった後に渡すようにアドバイスを残しておいた。
微笑ましい話である。