△月 □日  No468 平等と公平


我々は幻想郷に列車を用いて物資を運ぶ仕事をしているわけだが
新入社員の中には幻想郷内ですべてを自給自足すればよいと
言う人がいて頭が痛くなる。
幻想郷でなくても、ひとつの地域ですべてを自給自足するのはまず不可能である。
そんなことをすれば確実に破滅が待っているだろう。


実際に外国の力を借りないで自給自足しようをスローガンにした国家は
たいていろくな状態にはならない。飢饉が起これば食糧危機が起こり
多くの死者がでる。 経済はどんどん減速して国家に活力がなくなってしまう。
最後には無政府状態となり内戦状態が続くことになることが多い。


幻想郷に物資を運ぶときに朝倉からきつく言われたことがある。
それは平等と公平をはき違えるなと言うことだ。
朝倉に言わせると、我々が運んだ物資を平等に配ってはいけないらしい。
平等は人々から活力を奪うというのだ。 あくまでもお店に行ってお金さえ払えば
公平にその物資を手にすることができる。
住民同士の格差や嫉妬心はのし上がろうとする人を生み、社会に活力を与えるのである。
だから我々が運んだ物資が末端の庶民まできちんと届く保証はまったくない。


自称現人神から輸送した食べ物が人々まで届いていないと文句を言われたことがあったが
そんな話をしたら納得いかない表情になりながらも、最後は頷いてくれた。
最初は態度がでかいと思っていたが、最近は頭の良さに感心している。
その自称現人神もまた幻想郷の生活で不自由さを痛感しているようだ。
それだけ結界の外はさまざまな見えないインフラによって守られているのだ。


ここまで日記を書き進めたところで何故か涙が出てきた。
自分に感動しているのではなく、自分のところの社員と自称現人神を比較した瞬間
妙に泣けてきたのだ。
入社一年にもなってまさか「不良返品って何ですか」などと聞かれるとは思わなかった。
思わず自分の仕事の意義を書き出さないといけないような衝動に襲われた。


今は反省している