△月 □日  No479 街頭テレビ


最近例の神社に参拝客が多く押し寄せるようになったらしい。
神社の前に出店を出している夜雀からそんな話を聞いた。
それ自体は別に問題ではないのだが、博麗神社をさしおいて新設の神社に
客がたくさん来るのは何かあると思って足を運んでみる。
すると、神社の境内にゴザが敷かれて、そこに妖怪やら人間やらが座りながら
わいわいがやがやと騒いでいる。


妖怪の一人に一体何が起こるのか尋ねたら、動く写真が見られるという。
神社に住んでいるおねえさんが見せた物はテレビであった。 
ブラウン管の大型テレビである。 そこに皆の視線が集まる。
電波もないのに映像をどうやって出しているのかはちょっと見ればすぐに分かった。
ケーブルが伸びてビデオデッキが繋がっていた。


画面に映像が映るとみんな大騒ぎ。式神が中にいるのかと真横から覗き込む者
効果音に驚いて弾幕を放った挙げ句、流れ弾が別の妖怪に当たって袋だたきに
される妖精など反応はさまざまだが、天狗達の一行だけは一同白けた表情をしている。
理由を尋ねたら、中途半端な写真がたくさん流れているだけと言った。
天狗達は目が良すぎて、映像がコマ送りの映像に映るらしい。


夜店に材料を届けつつ、終わった頃を見計らって様子を見に行ったら
妖怪数人に弾幕ごっこを申し込まれた。 私は弾幕なんて扱えないと抗議したが
活動写真の人間はカードがなくても弾丸をよけていたと言う。
おねえさんが私のことを実は妖怪だとフォローして
いなかったら今頃確実にあの世への配属替えとなりそうである。


どうやら一部の妖怪たちは特撮を結界の外で起こっている出来事だと勘違いしている
ようだ。 もちろん妖怪の中には外の世界からやってきた者もいて
面白かったとか、懐かしいとか言ってくれる者もいたが、
中には真に受けた妖怪もいるようで一生懸命メモを取っていた者もいたらしい。


ブレザー兎が自称現人神と居合わせた私に質問をなげかけてきた。 
結界の外にいる男はこんなにも強いのかという内容だった。
テレビに一体何が映っているのか、モニターに目をこらして見てみると 
そこには軍隊相手に一人で戦うコックが映されていた。


とりあえず「あり得ない」と答えておいた。