△月 □日  No499 幻想の世界の屋根葺き替え


藁葺き屋根の葺き替えを手伝いに行く。大体この時期になると
ローテーションで屋根の葺き替え工事をすることになっているのだが、
これがとても手間がかかる作業である。
そこで人海戦術で一気に屋根の葺き替えをするというのが習わしとなっている。


空からアプローチできる妖怪たちがいるおかげで
葺き替えの風景は我々が知る風景とはかなり違っている。
妖怪たちは新年のご馳走を手に入れるために丁度物いりなので
こうした屋根の葺き替え工事などは喜んで応じてくれるらしい。


藁は半年あまり丁寧に乾燥させたものを用いる。
結界の外なら防水紙を敷き詰めてから屋根を葺くのだが、
幻想郷ではあくまで伝統的手法に則って工事を行う。


結界の外の世界では足場を組んだり、たくさんの梯子を据え付けているのだが
幻想郷ではそんなものは必要ない。妖怪たちは宙を舞いながら次から次へと藁を
運んでいく。 宙を舞う藁はまるで金色の雲が流れるようで見る者の目を楽しませる。
天狗達もその模様をカメラに納めている。 私もカメラをもっていれば
残しておきたい風景の一つだ。


私が応援に行ったのは屋根の葺き替えの手伝いではない。
手伝ってくれた妖怪たちにはお酒とご馳走が用意されるので、それらを運んだり
鍋を振る舞ったりするのである。 このとき双眼鏡を使って手伝っている
妖怪たちの名簿を確実に作らないとあとで食中毒になる妖怪が出ることになる。


味噌味でまとめた汁に色とりどりの野菜を入れて
日本酒と一緒に食すのがここの風流らしい。
屋根は一度葺き替えると10年持つと言われる。 現代の新建材にも匹敵する
高い耐久性である。 まさに幻想の智恵と言うべきだろう。


屋根の葺き替え工事 それは妖怪たちにとってもちょっとした
楽しいイベントみたいなものである。