□月 ○日  No510 幻想の世界の契約書


妖怪たちと商売をしていくに当たってとても重要なアイテムがある。
それは契約書である。 妖怪たちは契約を頑なに守るのだ。


スペルカードルールもその中の一つである。
やもすれば自分が不利になるはずのスペルカードルールを妖怪たちは確実に守る。
これは商売の世界にもいえることで、妖怪たちは契約書をきちんと守るので
きちんと決めごとを書面でまとめれば、まず裏切られる心配はない。
人間とは大違いである。 人間では契約を破ると罰則規定こそあれど
発覚するまではお咎めがない。
ところが妖怪の場合は発覚する以前の問題として契約に言霊としての意味を持たせ
少しでも逸脱するとペナルティが課せられる仕組みとなっている。


そもそも妖怪たちが契約書をきちんと守るには理由がある。
契約書を守らないとお互いが痛い目に遭うことを経験で分かっているからだ。
八百万のカミがなにも規制なく力を行使すると、ドミノ倒しのように色々なものが
破綻を来してしまう。 そこで万物の動きにはルールが設けられたという。


問題は妖怪と契約するときなのだが、なだめすかしたり色々貢ぎ物をしたりと
面倒この上ない。 好きな物嫌いな物は可能な限り予習をしておき
資料を用意して、契約内容が妖怪にとって有利な物であると証明、説得しないといけない。
相手は海千山千であり、嘘をつけば即座に看破される。
こちらも命がけである。


契約書で有名な物は悪魔との契約書だろう。
あの契約書の訳文を見せて貰ったが、まるで悪徳企業の契約書のように
細かく特約がついていることに気づいて閉口した。
莫迦な人間は特約なんて見向きもしないで契約してしまうので
あとで人格を乗っ取られたりしても文句は言えない。
そもそも、そういう連中と契約しているしている奴はろくでもないので
たいていが自業自得である。


今日、例の神社でスペルカードルールを採用するための契約書を見る機会があったが
電気水道などライフラインの確保が条件に加えられていた。
自称現人神の文字で食べ物が色々追記されていて、微笑ましい気分になった。