□月 ★日  No556 ホームパーティに込められた意味


うちのボスはことある事にホームパーティーを開く。 毎回美味しい食事とワインに
ありつけられることもあり、食費を浮かすためという本音もあるがパーティに参加している。
毎回出されるご馳走の材料を買い出すだけでも相当のお金がかかる。
業務用スーパーに箱単位で果物やら野菜やらを発注している。 彼らには我々が
よいお得意さんに見えるだろう。
私はボスがホームパーティを開くのは単に趣味のためだと思っていたが、朝倉によると
重要な理由があるらしい。


ホームパーティの意図を考えるとき、パーティをよく行う米帝の事例が参考になる。
米帝はいわば移民の国で人種のるつぼである。
島国である我が国の場合は会社の面子の価値観もある程度統一されている。
だが米帝はそうはいかない。文化の違い、信教の違いありとあらゆる価値観が混在している。
こうした価値観を知るためには会社の中だけでは不足で、お酒が入った状態にして
本音を聞き出せるようにする必要があるという。


ではボスの場合はどうか、朝倉に言わせれば幻想郷もまた人種のるつぼであるという。
幻想郷の妖怪は国籍がなく、実に様々な文化圏の妖怪がやってくる。
当然文化から衣服、習慣に至るまですべて違う。
うちの会社もそうした妖怪たちが多く在籍している。彼らの緊張をほぐして本音を知るために
どうするのか? 宴会を開いてお酒を入れる必要があるのだ。
かさむホームパーティの費用もボスに言わせれば投資の一部だというわけだ。


例の神社のおねえさんがやってきた時に宴会を行ったのも、結局は色々と経歴をもっていた
新しいカミ様の本音を聞き出す意図があったらしい。
もちろん彼女たちも信仰を集める必要があるから、自ら本音で語るしかない。かくして
おねえさんたちは、幻想郷に受け入れられたというわけである。


幻想郷がよく宴会を開くのも、単に酒が飲めるという理由だけではなく重要な意味がある
生活の智恵だったわけだ。 幻想郷は思った以上に奥が深い世界である。