□月 □日  No111 甘粕の回顧録2 


ゲンソウキョウに赴任してから一週間。
そのすべての出来事が驚くことばかりである。
まず少女が空を飛んでいる。
彼女たちはいずれも妖怪であり、魔力と呼ばれる力で宙を舞っているという。
なんと目に毒な、もとい恐ろしい場所だ。


少女の姿をした妖怪たちはしばしばいざこざを起こしている。
特に妖怪同士の喧嘩は、血で血を洗う壮絶なもので5体満足でいられるのが不思議な惨状である。
この日、そんな妖怪のいざこざをルール付けしようとする人物に会うことができた。
その名は、朝倉理香子と言う。この世界を隔離したという偉大な妖怪「八雲紫」の命を受け
魔力を封じたカードを用いて決闘を行おうと考えているらしい。


私の仕事は彼女の家に、羊皮紙とペン、そして銀色の円盤を送り届けることだった。
銀色の円盤はいわばLPレコードのようなものらしい。 レコードよりは遙かに小さいが
これでカセットテープに換算すると一万本くらいの情報量が入ると説明された。


彼女の家は高度に近代化されていた。
未開の土地から突然未来世界に飛び込んだような印象だ。
見たこともない薄型のテレビには無数のグラフが映し出されていた。


彼女の家に行くと必ず昼食を準備させられる。
学生時代、喫茶店でアルバイトをやっていたのでちょっとした小料理ならお手の物だと自負している。
冷蔵庫の中はお酒でいっぱいで、食材を入れる場所がほとんど無かった。
この冷蔵庫には高価な冷凍機能がついていた。 この冷蔵庫は氷を入れる必要がないようだ。
朝倉理香子はいつか、妖怪相手に酒場でも経営できるのではないかと茶化していた。


朝倉理香子から受け取った試作品は上白沢慧音の元で試運転されて
返答が帰ってくる。 受け取った内容を読んでみると、カードが破裂したり、弾幕?が自分の元に押し寄せたりと
まだまだ発展途上であることが見て取れた。


妖怪たちが平和に暮らせるようになるのはいつのことだろうか。