□月 □日  No621 金縛りの真実


閻魔様から先日の事件の事後報告がやってきた。
そこには「結局男は外見だった」といつまでも愚痴っていたと書かれていた。


幽霊が生きている人に干渉するとき起こす金縛り
意外と気軽にできる上己の存在をアピールしやすいので大人気の嫌がらせである。
目的は人それぞれ。 殺して自分と一緒にいてもらいたい奴、ただの面食いまでいる。


久しぶりに小兎姫を発見したので適当に話をしていたら
とても困った幽霊がいるので対処してもらいたいと言われた。
最初私は変態幽霊が生きている人間に嫌がらせをしているのだと思っていた。
だが最近金縛りに対する理解が増えたのか、幽霊すら想像できない困った現象が起こっている。


幻想郷のとあるムラ。幽霊Aに話を聞いた。
最初は憑き殺そうとして金縛りを起こしてみたものの、相手はマイウエイな奴だったため
逆に口説かれて墜ちてしまったらしい。
私も小兎姫もこれには口をあんぐり開けたまま絶句するしかない。
幽霊と言っても馬鹿にしてはいけない。 白玉楼に棲んでいるお嬢様や魂魄の跡取りは
明らかに標準以上の容姿をしていると言い切れる。


過去にも同じような出来事があったときは
憑かれた男の彼女が介入して幽霊に逆十字固めをきめてTKO勝ちを収めている。
このようにマイウエイな輩には人間も幽霊も関係ないのである。
紅白の巫女やメイド長や霧雨のご息女が亡霊軍団とやり合えたのもそのためだ。
今回のケースでは幽霊少女が青年に取り憑いてみたものの、愛し合ってしまって今度は命を奪いたくないと
言出している。 まことに身勝手通り越して頭が痛い。


そんな彼氏は最近自殺グッズを集めて、どうにかして幽霊同士で愛し合おうと画策している。
目的は解らなくはないが、こういうケースだと死んでも彼氏が違うところに逝ってしまうので
会うことができないのが定説である。
小兎姫が小声で「困ったバカップルでしょう」と言ってきた。彼女はこの手のトラブルが大の苦手らしい。
とにかく二人の話し合いが必要と判断して、霊媒師を介して話をすることに決定。
小兎姫がベテランの霊媒師を連れてきて交信がはじまった。 


ベテランと言うだけにこの霊媒師、かなり危険な容姿をしている。
幻想郷なので霊媒師を利用すれば確実に話ができるとわかっているのだが
彼氏も私もだんだん幽霊とじゃなくて霊媒師と話をしている錯覚に陥った。
だんだん彼氏の態度がそっけなくなっていくのは言うまでもない。


結局、幽霊少女は成仏することで話がついた。
これから生まれ変わって見返してやるとのことだった。
15年くらいしたらどうなるかが楽しみな事件であった。