□月 ●日  No754 幻想郷における罪と罰


上白沢の塾で何か聞いたことがある言葉を耳にする。
教育に関する勅語のようだ。 顕界では抹殺されたものである。
幻想郷に合わせて龍神様が発したということにアレンジされているが
まさか幻想郷で目にすることになろうとは思わなかった。


要するに道徳に関する心得を説いたものだ。
親を大切にしましょうとかコミュニティは大切にしましょうとか
そう言った話である。
この勅語が抹殺された背景は別として勿体ないとは思う。


幻想郷では子供の頃からコミュニティを守る掟を体得させられる。
門限とかそういった生やさしい物ではない。
とても厳しいし違反者のペナルティも凄い。


さて大人の場合はと言うとこれもまたかなり厳しい。
今日現場から逃走した社員を捕獲して幻想郷の人に
引き渡す何とも嫌な事件が起こった。
大暴れする男を妖怪たちが無理矢理押さえこみ
大きな袋へと入れてしまう。 まるで大きなサナギである。


彼がやったのは集金したお金を自分の懐にしまう
所謂公金横領だ。
実は幻想郷では公金横領は死罪なのだ。


さらに連帯責任も徹底している。
公金横領した部下を持った上司は監督不行届として
御役御免すなわち即刻解任となり、自宅謹慎となる。
隠蔽したらさらに年収が半減する。
下手をすると生きていられなくなる。
江戸時代のシステムがそのまま残っていると言えるのだが
幻想郷を守る為にはこれくらい厳しくないといけないようだ。


会社の場合はさすがに即解任とはいかず
自宅謹慎数ヶ月となる。 残業代がゼロになるので実質
ものすごい減収となる。
かなりの痛手だがこればかりは仕方ない。


会社の人間でも幻想郷のルールを破って死罪となった人を助けることはできない。 
もし強制送還した場合はうちの会社の信用問題に関わり、
幻想郷の住民の協力を得ることが出来ないからだ。
見捨てる気なのかと言われても仕方ない。
顕界では事故死として処理され、賠償金を払うことになるが
信用のためならそれくらいの損失は甘んじて受けないと駄目だ。


そうならないためうちの会社でも幻想郷のシステムは徹底的に学ばされる。
捕まった人だってこのルールを知らないわけではない。
分かっていてやったのだから弁護のしようがない。


今回はうちの部署とは関係ない事件だったとはいえ
かなり気分が悪い。 
魂魄が悪いことをやったら顕界でも社会的に抹殺されるだろと
言われたのが救いだった。