□月 ●日  No953 幻想郷の犯罪 窃盗編


配達に言っている先で、主人が陰鬱な顔で算盤を弾いている。
聞けば夜の内に商品の幾つかを盗まれたらしい。


幻想郷でも顕界と同じように犯罪は起きる。
窃盗や殺人なども普通に起きる。 もっとも妖怪自身が被害者になることはあまりないのが幻想郷である。
誰も逆襲が怖いからだ。
困ったことに幻想郷では怪盗の類で腕がいい者については評価してしまう文化もあるので
ちょっとした窃盗事件はそれこそごまんとある。


幻想郷では対面販売が主であるため万引きは発生しにくい。
また、町中で堂々と盗みを働くと自警団から制裁をうけることになる。
また世間が狭いので盗品を販売するためのルートを構築しにくい特徴がある。
従って幻想郷で盗まれるのは概ね現金である。
霧雨のご息女は盗みを働いたものを現金にするときに香霖堂を利用するが
これも現金に換金しにくいためそうなると言って良い。


最初の話に戻そう。盗まれたものを換金するとなればある程度場所は限られる。
そこで小兎姫に話して盗まれた物のリストで網を張って貰った。
が、引っかからない。 どこかに横流ししている可能性が高い。


地霊殿の主人に配達した時気になることを聞いた。盗品を売ろうとした奴がいるらしい。
その時はあまり興味がなかったが、盗品探しをしているという風の噂を聞いてくれたらしい。
真面目にやっていると協力者が現れるものである。


どうやら地上で盗みを働いて、地下に横流ししている人間がいるようだ。
ボスに報告するとビックブラザーの使用許可が下りた。
沢山の天狗たちによる風評受信システムである。 以前使ったことがある幻想郷版エシュロンシステムだ。
ここまでやれば後は荒事担当に引き渡すだけだ。
博麗の巫女に依頼してもいいが、余計なものまで破壊されそうなのでうちの職員だけでどうにかすることになった。


やはり盗んだ物を地下で売り捌いているところがあったようだ。
安価と言うことで繁盛していたが、周辺の店からは安すぎる、盗品販売をしているという噂があった。
結局、小兎姫たちが乗り込んだときには盗まれた物の半分くらいが売れてしまっていた。
一応、盗まれた店の店頭売価分を請求することで話がついた。


もちろん本当の店頭売価ではない 明らかにぼったくりの金額がつけられていた。
なんというしたたかな話だろう。
そして犯人も挙がったがはやり元この店の店員だった。 地下への道を偶然見つけたらしい。


その後関係者たちがどうなったかは知るよしもないが
最近配達していないのでどうなったのか概ね想像がつく。
幻想郷も外の世界とあまり変わらない人間模様が展開されるようである。