□月 ●日  No952 幻想郷維持に関する予算についての概略(抜粋)


以下 報告書より転載


「その敵はTDB(戦術データバンク)が殆ど役に立たなかった。
まるで幻を見ているようなその相手ではあったが一つだけはっきりしていたことがあった。
我が軍の戦闘機はその相手に悉く撃墜されていたことを。
ある者は敵が撒いたチャフらしき物に巻き込まれ
そしてある物は敵が撒いたと思われる弾幕に被弾して。


装備されていた対空ミサイルの類は役に立たなかった。
そもそも誘導させるための熱源がなかった。 いや仮に相手に向かったとしても
まるで壁のように立ち塞がる弾幕に遮られ満足な威力は得られなかっただろう。
何機かはアフターバーナーを用いてドッグファイトを試みたが、相手の動きは寧ろ
ヘリやVTOL機をそのまま戦闘機並みの機動力に引き上げたそれに近かった。」


転載終わり


以上がカザミユウカと呼ばれた妖怪と接敵した戦闘機パイロットたちの共通した意見である。
この模擬戦で一機5千万ドルほどの戦闘機数機がものの数分でスクラップにされてしまった。
もちろん全く考えなしに戦った訳ではない。 対地・対艦攻撃能力を重視した装備で立ち向かったし
可能な限りアウトレンジからの攻撃を試みた結果がこれである。


この報告は各国の防衛関係者にとって頭が痛い問題となった。
現代科学はすでに彼らに対して圧倒的な力を持って蹂躙できると信じられていただけにショックは大きい。
もちろん彼らに対抗するための兵器も幾つか開発、実験フェーズに移っており一定の効果を上げているという報告もある。
枯れ葉剤の散布が有効であるという報告もあるが、有効範囲から素早く脱出される上環境的被害も甚大であることから
最終的には所謂Bogy(妖怪)との戦闘には同じくBogyの能力を持った兵器を用いるのが有効であると言わざるを得ない。


救いは彼らはあくまで自治区に閉じこもり外部との接触をほぼ完全に絶っているということだろう、
もちろん内部の情勢は把握できるようにしておく必要がある。
現在はいくつかの組織を通じて物資を送り届けながら内情を調査させている。
報告に依れば、自治区は現在政治的に安定状況にあり、概ね平和であることが確認されている。
彼らの中には我々に協力的な存在もおり、彼らの政治的影響力を強化させるためのバックアップこそが
彼らの脅威からローコストで身を守るために最も有効な手段であると考えられる。
戦闘機数機を戦闘で失うよりも、それを買うお金と維持費を少しだけ自治区に回すだけで
最終的な費用を最小限にすることが可能であると考えられる。