□月 ●日  No958 妖怪発電所


竜宮の使いと言えば、発電妖怪として結構方々で有名である。


それは香霖のこんな一言から始まった。 
「竜宮の使いは電気を使う。 ならいまここにあるガラクタの類も竜宮の使いに頼めば動き出すのではないか」
言いたいことは判るのだが根本的に間違っている。 
だがこの発言に何人かの人妖が興味を示した。かくして竜宮の使い捜索大作戦が展開されたのであった。


ぶっちゃけると、竜宮の使いの発電できる電力では家電の類は動かない。
なぜなら竜宮の使いが発電できる電力はあくまで直流だからだ。
家電用品を扱うには、インバーター装置を用いて交流へと変換する必要がある。
従って仮に竜宮の使いに会うことができても家電用品を動かすことは難しいのである。


天狗たちに頼むと逆効果になるのが目に見えるので、自称現人神軍団に助けを求めてみる。
竜宮の使いがよく出没する妖怪の山の住民なら、連中より早く竜宮の使いに身を隠すように言うことができる。
ケロちゃん帽のカミ様が快諾してくれたのでなんとかなりそうだ。
彼女たちにしては、自分のところで使っている電化製品が弄られるのが嫌という事情もあるだろう。


とりあえずやるべきことはやったので香霖堂に戻ったら、なんとそこに竜宮の使いがいるではないか。
空気を読んで出現したらしい。 いや、こういう空気は読んで欲しくない。
だが、当然の如く家電の類は動かすことは出来ない。
鼻の穴にコンセントを差せばいいじゃないかと霧雨のご息女が言うが、どこのギャグ漫画だと言いたい。


香霖が同じ電気なのに家電が動かないのはおかしいと悩んでいる。
彼に直流と交流の違いを説明すると日が暮れそうなので、とりあえず倉庫に駆け込んで電球一個を持ってくる。
電球なら直流でも問題ないからだ。
とりあえず電極を握って貰って、電圧をかける。
ぱっと電球は光って、案の定フィラメントが切れた。


香霖が瞬間的に電気を作ることはできても、電気を発電し続けることができないと言ってくれたお陰で
とりあえずギャラリーは退散してくれた。 つまらないと口々に言われたが巫山戯るなと言いたい。
いいアイデアだと思ったと香霖がぼやいていたが、それは甘いと言うより他はない。


実は、自称現人神の神社に緊急用の自家発電機と太陽光発電用のパワーコンディショナがあって
いつでも借りることができるようにしておいたのだが、とりあえず出番がなくて良かった次第であった。


あとで竜宮の使いから小声で、実はその気になれば交流電力も作れると言われてびっくりした。、
天人たちの戯れに発電方法を覚えたらしい。