□月 ●日  No961 絶対安全圏


エイプリルフールだそうである。
社内では北白河が恋人が出来た発言で周囲を驚かせ、朝倉が結婚すると言って周囲から「ねえよ」と言われた日。
昨年は色々と不条理に遭って悲惨な想いをしたので、絶対安全な場所を探してみたらあった。
そこは地霊殿である。 相手の心が読めれば嘘をつかれても安心という物だ。
自分の心をさらけ出すリスクを背負うことになるかも知れないが、検証の手間を考えれば圧倒的に気が楽である。


地霊殿の荷物を素早く確保して、札をほぼ終日地霊殿に設定。 
この日のためにわざとこの日に地霊殿行きの荷物を集中させておいた。
我ながら巧くやったと思う。 妖怪たちをふくむ他の連中は地霊殿が苦手なのもプラスだ。
ついでに地獄も回っておこうと思う。 閻魔様にも嘘は通用しない筈だ。
地獄だからこそ、安全と安心が確保されるというものだ。


地霊殿到着早々主人から大爆笑された。どう考えても身も蓋もなすぎるということだった。
嘘をつかれないようにするために敢えて全てをさらけ出すというのはかなり危険極まりない。
同時にそこが狙い目である。
ペットたちはあり得ないとか、変わり者と言われてしまったが
去年の害有りまくり展開に比べればトラブルがない分楽なのだ。


地獄の鬼相手でも嘘をつかなくて済む分かなり気が楽である。
もっとも相手を陥れる嘘でない限り鬼は怒らないので、エイプリルフールで使われる嘘は有り得ることを
後になって思い出したが概ね気が楽でとても良い。
浅間からの依頼で露西亜美人の怪力乱心鬼娘にお酒一式を送り届ける。
いつの間にやら個人的に交流を持ちだしたらしい。 呑兵衛のネットワーク恐るべしと言ったところか。


閻魔様もいい意味で融通が利かなくてよい。
普段通りに接すればいいのは助かる。
実は死神についても嘘をついて言い訳ではないので、意外と楽なことに気づいた。
4月1日に亡くなった人の中にはエイプリルフールだからと閻魔様に嘘をつこうとする輩が結構いるそうだが
三途の川で何度も警告するのが面倒だとぼやいていた。


会社に戻ったら朝倉に風情がないと突っ込まれた。