□月 ●日  No984 魔界の謎


久方ぶりに魔界に珍しい食べ物類などを持って行く。
大半の物資を自給し、旧地獄にも物資を供給していることで知られる魔界であるが
今回の仕事はかなり珍しい分類となる。
恐らく直接食べるのではなく、生成するための資料としての注文ではないかと思われる。


魔界と言えば幻想郷の中ではちょっと毛色が違う自治区のことである。
貿易額が増え続ける月の都に対して魔界は強力なカミがいるせいか取引額は頭打ちである。
通貨は幻想郷と同じ物を使うのだが、微妙にレートが違う。
従って都度行われるレート換算がかなり面倒だったりする。


そう言えば月との戦闘に対して魔界は完全に沈黙を守り続けたことが知られている。
紅魔館にある図書館の司書をやっているデーモン族の娘がそう言っていた。
彼女たちがあそこにいるのは暮らしやすいだけが理由ではないと思っていたが
恐らく今回の月面戦争に関しても魔界に情報を送っていたと容易に想像できるだろう。


実際、ロケットには魔界の通信装置が備わっていた。
先日ロケットの残骸を回収したときに発覚したことだ。
岡崎が納品した覚えがない装置が入っていると言って大騒ぎしていた。
地霊殿プロジェクトで用いられた通信装置に近い構造をしていたので
人形遣いのアリスが忍ばせていたものだと勝手に納得していた。
魔界が月と一体どういう関係にあるのかは未だ不明であるが
少なかれ魔界の住民が月にかなり影響を受けた存在であることは事実のようだ。


魔界へ持って行く品を検品したら殆ど全部酒だった。
なんでも魔界神は酒を生成するのが苦手なのだという。
酒を飲んで利酒をしながら生成するらしいのだが、所詮利酒なので完全に再現というわけではない。
途中から自分自身が酔っ払ってしまい、複製された酒は似ても似つかぬ味になってしまうらしい。
これも魔界神がアルコール濃度の高いワインの類を好んで複製するからだという。
地下なのだからワイン樽でも置いて熟成させればいいだろと思ったが
今度は質のいい葡萄の自給が難しいのだという。 難儀な話だ。


一方で魔界から運ばれるのはなぜか書籍の類が殆どである。
直接うちの会社に運ばれるかと思いきや、何故かノーレッジ女史が管理する図書館に
運び込まれるのがセオリーだ。
もともとあの図書館は魔界からやってきた特殊書籍を保管するために建造された物らしい。
道理でデーモン族の司書がいるわけだ。  


紅魔館と魔界そして月、なぜヴァンパイアの主人が月に向かおうとしたのか
全ては繋がっているような気がしてならない。
あまりに何もかもが出来すぎているような気がするのだ。
魔界については他にも謎がある。 今のところ会社からの指示はないがいずれ彼らとの関係は
はっきりさせるべきではないかと思っている。