□月 ●日  No1043 幻想救急車


街を歩いていたら、どこかの家で医者をよんでくれという叫びを聞く。
顔面蒼白でかなり危険な状態なので、社内通話システムを介して救急妖怪を呼ぶことにする。
ほどなくしてリヤカーを引いた妖怪が到着。 病人を乗せて一路医者の元へと急ぐ。


幻想郷にも顕界にも救急専用車両は存在する。 救急車とついていないところがミソだ。
救急車両の歴史は浅いように感じるが実は、幻想郷と顕界が分離する頃にはすでにあったそうである。
もっとも当時は戦争の時のけが人搬送のためだったそうだ。
幻想郷の救急車はリヤカーのような作りをしている。 といっても引くのは専ら妖怪や式神である。
最高速度は時速100キロまで出ると言うから顕界よりもすごいと言えるかも知れない。


しかしながら幻想郷の場合救急搬送時の医療行為は殆ど出来ない。
当たり前のことだが応急装置を行えるような機材を運ぶのはまず無理だ。
スペルカードシステムを応用した、弾幕の代わりに救急機材を運ぶものもあるにはあるが
医療行為をするには一度止まらないといけないので意味があるとは言えない。


運良く薬屋の元に運ばれた患者は、予断は許さないものの最悪の事態は回避できそうな按配である。
後からやってきた家族に病状を説明、運び賃を請求、それを運んでくれた妖怪に渡す。
そう、実は救急車は行政サービスではないのである。
ボランティアや病院が雇った救急マンたちがそれを行うことになっている。
調子が悪いからちょっと送ってくれと言ったことは通用しない。


救急リアカーを引く妖怪に話を聞いたら、急性アルコール中毒や、酒の飲み過ぎで墜落した妖怪を収容することが
多いとのこと。 お酒の飲み過ぎで平衡感覚が鈍った時に建物に激突してそのまま失神することが多いらしい。
天狗と付き合ってしまい飲み過ぎた妖怪が壁を突き破ってそのまま倒れるという事例もあるらしい。


診療所を出ようとしたら新しい患者が運び込まれていた。
結構、幻想郷の救急医療も忙しいみたいだ。 ちなみに運ばれたのは痛んだキュウリを食べた河童だった。
幻想郷は今日も平和だと思った。