□月 ●日  No1102 恐怖と商業主義


幻想郷は自分が思った以上に複雑な存在である。 
それは現代社会と密接に関係しており、そこで起こった様々な事象には必ず理由が存在している。
その辺のルールは外の世界、即ち顕界と殆ど変わらない。


うちの会社で行われる研修で幻想郷が完全に分離されるプロセスについて歴史上の観点から
追いかける試みが成されている。
今回特に面白かったのは、妖怪が畏れられなくなるプロセスで恐怖の相対化が行われていたという
出来事であった。


恐怖の相対化はすなわち恐怖の娯楽化と言うべきかも知れない。
ある時を境に恐怖が娯楽と化してしまったのである。
これは妖怪にとって自らの存在を脅かすほどの大事件であった。
それは江戸時代に起こっている。


演劇のジャンルとしての怪談が生まれたのだ。
生んだのは人間では無く妖怪自身である。 自分達をもっと畏れて貰うために
正しい知識で啓蒙するために始めたのが最初だという。
結果は大当たり、怪談がブームとなり連日連夜大盛況だった妖怪は調子に乗って
皆を驚かせまくった。


人気があるものそれは即ちカネになるものである。
そしてとうとうショービジネスの一ジャンルになってしまった。
妖怪が自分達を知って貰うための話だったのに、人間によって脚色された妖怪は
明後日の方向へと進み始めてしまった。
気づいた時には既に遅かった。


妖怪に対する正しい知識は別の副作用を生んでしまったのも無視できない。
妖怪に対する恐怖から対処方法まで同時に研究されてしまったのだ。
皆も心当たりがあるはずだ。 何かに出会ったときはこうすればいいと。
これには妖怪たちも大弱りである。 一体誰がこんなビジネスを始めたんだと
恨み節まで出る始末となった。


現代の博麗大結界が生まれる100年程度前の話であるが、こうした事件が蓄積して
完全な分離をすることになったと考えるととても興味深い内容である。
ちなみにショービジネスのうまみを知った一部妖怪は。
うちの会社のスポンサーとなっているのである。
色々と奥が深い。