□月 ●日  No1114 紅魔館と素敵香水


秋の長雨が鬱陶しい季節である。
今日、大量の香水の類を紅魔館に納品した。
ヴァンパイアの主人の衣服に掛けるためである。


北白河と一緒にたまたま紅魔館を訪れたら、北白河が香水は偽物ではと言い出して
一気に背筋に悪寒が走った。
北白河の指摘通り調べてみるとたしかに成分的には同一だが、偽ブランドを利用していることが
わかった。


何故香水が必要なのか。
意外と難儀な話なのだが、ヴァンパイアの主人の衣服は天日に干した後すぐに着ることが
できないというこまった制約がある。 
天日に晒されたという謂われが彼女にとって負担となるからだ。
しかし、きちんと干すものを干さないと臭い。
意外と洒落になってない。


冴月の話だと、メイド長が来る前はもっと臭いが凄かったという。
元々ヴァンパイアは臭いをあまり気にしないし、ノーレッジ女史は寧ろ黴臭い臭いが好きときている。
臭いについて初めて発覚したのはやはり美鈴女史がやってきたときだろう。
彼女が門番をやっている理由の一部は臭いという説もあるくらいだ。


話を戻そう。
最近メイド長はヴァンパイアの主人にカリスマのたしなみとして香水を付けるのを強く勧めている。
ここまではよい。 
誰が入れ知恵したのか、やたら高価なブランドものを指定するのでコストが掛かって仕方ないのだ。
やった人は大体決まっているので深くは考えない。
お陰で見積もりが結構大変になってしまっている。
しかし偽物だというと話は別だ。 金額は減るからいいのだが
第一どこから仕入れているのか、そして発覚したら流石に命はない。


慌てて二人で納品伝票と商品を付き合わせると該当する商品がなかった。
ますますもって不可解である。
意を決してメイド長に聞いてみた。
もちろんこちらの意図を悟られないように言葉を選んでだが。


実はこの香水、隙間妖怪がいらないものだからと譲ってくれたものだという。
顕界で押収された偽ブランド商品だったため、使い切ると代わりのものがないそうで
新しいものをこちらに注文してきたという次第らしい。
高価な物だと言うと、隙間妖怪もたまには気の利いたことをするのねと感心していた。
ますます真実を伝えてはいけないと悟った。


結局現実路線でいくつかの安価な香水を送ることにして貰った。
報告を受けたボスの苦笑いが忘れられない。