□月 ●日  No1116 あそびじゃないの


幻想郷の秋。 秋姉妹が元気になる季節。
この時期になると保存食を作るための採集活動が盛んになる。
冬になると食べ物が殆ど手に入れられなくなるので、この時期にきちんと保存食を確保しないと
途端に飢えてしまうのである。


そこで、幻想郷では食糧確保のため妖怪の山に採集ツアーが企画され
そこでの収益で冬を凌ぐのが通例となっている。
この時ツアー客を護衛するのが白狼天狗の皆さんである。
白狼天狗は一人では弱いが組織的行動を取らせるととても強いことが知られている。
暇つぶしでやっている将棋も基本は戦略的行動のための訓練だと言われてる。
少なくても組織力なら月の兎軍団よりずっと上だと言い切ることができるだろう。


たまの休暇と言うことでこのツアーに参加することにした。
はっきり言ってツアーを舐めていた。 基本的に獣道をただ歩くだけなのだ。
妖怪たちは空を飛んでいるから道がきちんと出来ているわけではない。
草をかき分けて前へ進まないとならず それだけで疲れてしまう。


キノコを拾うのだが、どれが毒キノコなのか殆ど判らない。
ツアーに参加する人たちは経験で判っているらしくスムーズに採集しているのだが
私の場合は都度天狗に聞かないとならず、効率がまるであがらない。
あまり質問ばかりしていたせいで周囲の視線が痛い。


白狼天狗の判別方法も特徴的である。
嗅覚が優れているため、臭いを嗅いで毒かどうかを判定しているようだ。
おかげでちっとも参考にならない。


暫く採集していると巡回している鴉天狗に見つかった。
突然着陸すると、抜けてくれと言われた。 
会社の人間は喰うために参加しているわけではないので邪魔になるということだった。
食糧確保がなにが悪いと反論すると、鴉天狗に拉致されてしまった。
里で下ろされて色々叱られた。


慣れない人間が山に行くべきではない。
一応先導する人がいるとしても、軽い気持ちで参加して事故があったら
ツアーそのものがなくなってしまう可能性があるわけだ。
それによって何人もの人が飢えることになったら責任を負えないというわけだろう。


費用は半分だけ返金して貰うことになったが
やはり幻想郷の外の人間は所詮は外の人間なのだと思い直した日であった。