□月 ●日  No1117 地下はよいとこ一度はおいで


地下世界に建築資材を搬送する。
地下世界の建造物は驚くほど地上の世界と酷似している。
本来地下世界なら無理に地上の建造物に似せる必要はないのだが
基本的な機構は殆ど同じと言って良い。


雨が降る心配はしなくても良いので屋根は要らないと思いきや、
地上からしみ出す水が結構な量あり、常に水じまいを意識した建造物の造りを余儀なくされている。
特に太陽光による乾燥の要素はないのだが、場所によっては地熱があり
色々と配慮した建造物を造るしかないという特性がある。


地殻変動に対応しないといけないことから、主要な建造物 パンデモニウムなどは自走可能と
なっている。 こうした自走可能建造物はいくつかあるらしく、元は天高く舞い上がる船だった
という話も聞いたことがある。
地霊殿みたいに固定した建造物もあるにはあるが、これは灼熱妖怪などが地殻変動
結果的にだが制御しているからに他ならない。


地下はいいところ一度はおいでじゃないのだが地下世界は驚くほど快適である。
伊達に生命の避難所と言われていない。
地下に封じられた妖怪たちがあまり恨みを感じることなく平和に暮らしているのは
下手すると地上よりも環境の変動が少なく快適だからと言われている。
鬼の一人は台風の心配も要らない地下の方がずっと気楽だと言っている。
食糧の確保が問題となるが、地熱を利用した野菜類の栽培技術も発達させており
地上の幻想郷よりも食糧自給率が高かったりする。


むしろ地上の妖怪たちが地下にコンプレックスを持っているというのが
私の個人的感想だ。 だから地下の妖怪たちをわざわざ怨霊などと呼んでいる。
実際には対して恨みなんてなく、むしろ地上の妖怪の差別意識に驚き憤慨するのが
大体のパターンだったりする。


その証拠に相手の心を読めるような物騒な妖怪も地下世界ならそれなりに暮らしていける
現実がある。 心が読まれてもそれほど社会生活に支障を感じないほど
彼らが大らかであるという証拠である。 なんともはや。


建築資材を受け取った鬼が美人過ぎて困る。
みんな顔が白くて透き通っている。 紫外線を殆ど浴びないのだから当然なのだが
彼女たちの肌の綺麗さは一見の価値があると思う。
美白狙いで地下に潜っている魔法使いもいるとか朝倉に聞いたことがある。


ずばり言うが地獄は現状で天国よりも快適だったりする。
拷問施設がなければ奇妙な逆転現象が起こると言って良い。
これだから幻想郷は面白い。