□月 ●日  No1123 空回り救出活動


我々は幻想郷を利用した商売をしているが、他の会社が手をこまねいているなんてことは
ないわけで、他の会社が幻想郷に侵入して商売の糸口を探すなんてことが最近増えているように思う。
会社を辞めた人を雇ってノウハウを吸収しようとしているようだが、そう簡単にできるとは
思えない。
考えてみるとヤバイ妖怪ばかり応対しているのだが、すこし感覚が麻痺しているのだと思う。


この日も他の会社のビジネスマンらしき人が助けを求めていた。
ろくにノウハウが無い人が幻想郷に行った場合は実質サバイバルみたいな状態になる。
しかも住民に会ってもそれが妖怪か人間なのか見当もつかないのだ。
しかも相手が妖怪だった場合は容赦なく補食対象となる。 
まるでゲリラが住んでいるジャングルの中に放り出されたような状態となるのである。


数日前から人間の里で食べ物類が盗まれるという事件が頻発してた。
世間が狭い幻想郷でこういった噂はすぐに広まる。
これから長い冬を過ごさなければいけない住民にとっては死活問題になりかねない。
外の世界からやってきて偶然博麗の巫女にあって迎えられるなんてことは
ベガスで100ドルでジャックポット当てろと言うようなものだ。


助けを求めている人に話を戻す。
基本的に他人の振りをしないといけないのだが、寝起きが悪いので取り敢ず住民の振りして
助けてみることにした。
案の定自分が置かれ居ている状況が分かっていない。
助けを求めている癖に、触ろうとするとナイフを向けてくる。
食い物をくれと言われても持ち合わせがないので手に負えない。
これでは強盗とあまり変わらない。 助けなければ良かったと後悔する。
反応から、たぶん連れが一人やられたのではないかと想像する。


時間が勿体ないので、適当な妖怪に助けを求めようとしたら
たまたま通ったのが小傘嬢だった。外の世界をよく分かっている妖怪だけに
上手く応対できるかも知れない。


と思った私がバカだった。
いきなり彼女がやったことはやっぱり驚かすことだった。
この不意打ちで相手が余計に暴れてしまった。
この不測の事態に喜んでいるのが小傘嬢である。 驚いてくれたことが嬉しいのはわかるが
今はそんなどころじゃないと思う。


小傘嬢よほど嬉しいのか追い打ちを掛ける、
気持ちは分かるが空気読めと言うもうれしさが先行して聞いて貰えない。
振り回したナイフに傘を傷つけられたのでなし崩し的に弾幕戦に入ってしまった。
こうなるとこっちは逃げるしかない。


すこし経ってその場に戻ってみると上機嫌な小傘嬢に偉く感謝された。
人間は結局奥へと行ってしまったらしい。
多分彼は人前に二度と現れないだろう。 自業自得ではあるが、すこし可哀想だと思う。


小傘嬢に感謝されたが、あまり嬉しくない。
気に入られてとりあえず良かったと思うべきなのかさっぱりわからない。