□月 ●日  No1129 貸した金返せよ


何処の世も変わらないのは金貸しと借金苦にあえぐ人らしい。
配達活動をしていたら借金の取り立てをする虫妖怪に出くわした。
彼女も大変だ。金は返さない前提の輩ばかりでスペルカード戦闘で有耶無耶にしようとする者ばかり。
もちろん虫妖怪もお金を普段から返す意志がなさそうな人には貸さないようにしているのだが
そもそも借りる人にまともな収入があるわけではないのがとても痛い。


それもこれも幻想郷に与信というシステムが存在しないのが問題だ。
そもそも顕界でさえ与信の問題はとても重要である。
クレジットローンで割賦契約を結ぶとしても最近は年収を記入しないといけない。
しかし幻想郷の場合、安定した収入を確保することがすでに難しい。
○○が売れたらとか、そういったあまりにも不確定すぎる借金返済方法に頼らないと
いけない事情がある。


さて、虫妖怪には副業がある。 それは酒屋さんだ。
お金を扱う仕事をするところでは副業でお酒を売ることが多い。
いわゆる土倉である。
お酒をいつも買っている妖怪たちはどうしても虫妖怪に引け目を感じることとなる。
引け目は幻想郷の妖怪たちには致命傷だ。 弾幕戦も大いに有利に進めることができる。
実力差はお酒の力でカバーしていると言えよう。


しかし、今日の相手はかなり強情である。
どうやら意地でもお金を返さないらしい。こうなると弾幕戦もかなりきつい。
どうするのかと虫妖怪に尋ねたら切り札があると言われた。
答えは私の後ろにいた。


まるで恐怖の帝王の如く仁王立ちするフラワーマスター 風見女史である。
これには私も仰け反った。 ついでに腰も抜けた。
しかし相手も声こそうわずっているが負けてはいない。
「殴ったら、借金を返せないぞ」と精一杯の反論を試みる。


「三途の川の渡し賃を徴収するから大丈夫」
それが風見女史の答えだった。
風見女史の言葉はまるで法律のような重みがある。 
どっちも無視したら現実となるからだ。


結局返しきれないというので、紅魔館に連行して血を抜いてそれを換金して
返済などと言う最悪の展開が待っていた。
死なない程度に血を抜いたと言っているが今にも倒れそうなところまで抜くことはないだろう。
それでも相手は命があるだけマシという。


少なくても幻想郷で借金をするのは得策ではないようである。