□月 ●日  No1161 -


千年ぶりと言うべきかな。
長い期間幽閉されていて、精神の変調を来していないとは大した精神力だ。 
まさかあの男の娘を人質に取るとはなかなか上手いことを考えるではないか。
だがその方法でお前が開放されるとは考えない方がいい。
あの男は法界から娘を救出しようとするだろう。それは近いうちに実現できる。
しかしね、その必要はないのだよ。 
お前はここから脱出することが出来る。私が約束しよう。


状況が変わったのだよ。
人間と妖怪の関係も変わっている。 嘘だと思うのなら直接見聞きすると良い。


単刀直入に言おう。
八雲紫は狂ってる。
未だ対抗手段が確立していないこの状況で再び月面人と一戦交えるのは正気の沙汰ではない。
我々は世界を守らねばならない。 
世界を破滅させかねないこの状況を看過してはならないだろう。
そうなれば人間も妖怪も関係がない。


お前は見ていた筈だ。
仲間が次から次へと光芒に包まれ破裂していく様を。
反撃の暇すら与えられず、崩壊する肉体を。
今は彼らのタネまでは把握することができる。しかし直接対抗する手段はまだない。
だからだね、君の知恵を借りることにした。
それだけ状況は切迫しているのだよ。
竜宮の使いが今必死に妨害工作を行っているが、恐らく大した時間稼ぎにはならないだろう。


報酬はそうだな。 宝塔なんかはどうだろう。
張り子の寅は亡くしたと思っているようだがね。 返して貰った。
元の持ち主の元に戻るんだ。 問題はあるまい。
良い知恵が浮かんだら教えてくれ。 また会おう。