□月 ●日  No1173 幻想郷の住人と衣服


幻想郷の妖怪のみならず人間型妖怪は基本的に服を着る。
服を着なければ猥褻物陳列罪とかで捕まりかねない。妖怪として人を驚かす前に変質者呼ばわりされてしまう。
大師様の話では昔はもっとフリーダムだったという。
もちろん己の力を誇示するような服を着る輩も多かったが、全裸の妖怪も結構いたのだ。


妖怪たちの中には動物から転じた物が数多くいる。
彼らが人間型をするのは人間を捕食するのに都合がよかったり、人間が作った生活インフラを利用できるからに他ならない。
かつて雨露を凌ぎたいと思ったとき、森の中でじっとするしか手はなかった。
しかし人間の姿をしていれば、住居にいることだってできるのだ。
最近のシロアリはコンクリートで埋められた犬走の下で生活することが増えたという。
ヤマメ女史の話だが、雨が降って水没することを考えれば、コンクリートの下はちょうどいい環境なのである。


そんな人間型の妖怪たちだがここで衣服が問題になった。
法力の高い妖怪ならそんな苦労はなく、服ごと姿を再現することができるだろう。
何匹かの妖怪は、犠牲者となった人間の衣服を奪って服とした。
カミたちは、ぎりぎりまで全裸のカミだらけだったりする。
それほどあまり衣服に対して厳しくなかったのだろう。


しかしそんなことができない妖怪はどうなるのか?そんな彼らが生まれたままの姿で生活したら大変なことになる。
女型の妖怪でも大問題だが、野郎型の妖怪が逸物をフリフリしながら歩けば大変なことになる。
米帝にはそんな妖怪もいるらしいのだが。 少なくてもまともな社会生活は期待できないだろう。


ここでひとつの疑問が残る。
妖精たちはどうなのだろうか。 妖精たちは衣服を着る必然性が見あたらない。
すると朝倉がこんなことを言った。悪戯をするのに全裸だったら目立つだろうということだった。
確かに違いない。


かくして現代に至る訳なのだが、こうしてみると幻想郷の妖怪は本当に常識的な格好をしているのだなと
感心する。 国が変われば妖怪も変わるが他の国の妖怪はそうはいかない。
個人主義の妖怪が多い別の国なんかもっと個性的な外見をしているし、妖精も同じ服を着てはならない不思議な決まりがある。
全体主義的な印象を受けると言うことらしい。 逆手にとっている妖精もいるくらいだ。
こうして考えると妖怪の文化形態もなかなか奥が深いが思うのだがどうだろう。