□月 ●日  No1221 冬至の風景


冬至。夜が一番長い日であり妖怪が一番元気な日である。
ここぞとばかりに色々な催し物が行われる。
オールナイト仕様の店も開かれさながら縁日である。
一般の人間は早々に店じまいするなり寝るなりする。
と、言いたいところだが、昔と違って妖怪と人間の関わりが濃厚な現在
妖怪相手のビジネスで幻想郷住人もかなり必死と言えるだろう。


冬至と言えば「湯治」とかけているのは有名な話。
この時期、寒いのに空中移動して身体を冷やした妖怪達が
温泉へとなだれ込んでいる。
かぼちゃを食べてビタミンを補給する風景もあちこちで見られる。
薬屋はビタミン剤提供を禁止すべきだと思う。
温泉にはあらかじめ輸送していた柚が運び込まれる。
乾燥のため荒れた肌を癒すことができるわけだ。


ここで問題となるのが妖怪と人間の境界の人々である。
この日、妖怪達に温泉が無料開放されるのはよいのだが
魔法使いや仙人の類みたいに遺伝学上明らかに人間でも、魔術的特性から
一応妖怪にあたるタイプの人間の場合、妖怪扱いしていいかどうか悩む。
妖怪扱いすると怒り出す者もいるので始末が悪いのだ。


大師様みたいに私は人間をやめたと言い張っている人はそれはそれで迷惑である。
妖怪からお前は人間じゃないかと反発がくること必至だ。
一方で月人は私は妖怪でも人間でもないとか言い張っているが
そのくせ、温泉に入りたがるダブルスタンダードぶりを発揮している。
詐欺師兎が入ると言ってせいで姫様が入ると騒いだからというのが実情だ。


仕方がないので、隙間妖怪達との協議の結果、今年は人間でも自分が妖怪だと
自称するものがいたら入れることにした。
ただ、これだと妖怪と一緒にお風呂に入りたい変態どもも入れることになるので
その場合は色々飢えているところに入れてあげると二度と来なくなってくれる。
まこと羨まもとい、恐怖の空間である。
結局そういうチャレンジャーはほとんど現れず、幻想郷の生態系を乱しまくりたいと
言い張る妖怪達をがっかりさせたわけだがそれはそれであろう。


さて、冬至がおわる明けの明星になると撤収作業が忙しいことになる。
実は24日になると山のカミ様が妖怪の山を巡回するため一切の山仕事が禁止となるのだ。
人海戦術にものをいわせ、出店を皆で片付ける。
これもまた冬至のちょっとした風景である。