□月 ●日  No1320 ダブルスポイラー委託記念? 天狗のクレーム


年度初めで挨拶周りなど忙しい時に天狗からのクレームの電話が来て朝から萎える。
念写が上手くいかないとかどうとか騒いでいて要領を得ない。
なんでも河童から取り次ぎされた電話とのことだが、河童が判らないことをこっちに回されても困る。


取り敢えず念写の仕方を尋ねると、彼女が念写と言っていたのはネットの検索であることがわかった。
実は幻想郷のネットは顕界のネットに乗り入れている。もちろん検閲システムが働いてはいるのだが
コストの都合上、顕界のインフラを幻想郷に持ち出した方が有効だったという事情がある。
つまり彼女はネット検索が上手くいってないと文句を言っているわけだ。
そこで自分の環境で確認をすると正しく動作している。 インフラが原因とは考えにくい。


もっと話を聞いてみる。通信は正常なのでそれを伝える。
すると検索は出るが、そこに表示される情報は嘘ばかりだというのである。
ネットだから嘘も真実も混じるのは当然だろうに何言ってるんだと思ってふとカレンダーをみた。


4月1日だった。
全て納得した。


確かに表示される検索結果は嘘ばかりの情報である。
ネットはここぞとばかりに嘘情報をジョークとして並べ立てている。
だが、ネットの情報に依存しているこの天狗にとってこのイベントは迷惑以外の何者でもない。
しかも顕界の人ならいざ知らず彼女は幻想郷の住人である。エイプリルフールを説明するのは
少々骨が折れる。


こちらの考えも知らず自分を棚に上げて文句を言う天狗。
さすがの私も堪忍袋の緒が切れた。
物事の真偽を確かめたければ直接行動すれば良いのだ。
自分で行動しない癖に真実を知ろうだなんておこがましい。
文句があるなら、文々。みたいに捏造でも脚で稼いだ新聞を超えてみろと
そういう趣旨の話を捲し立てた。


相手がもっと激高すると思って身構えていると、何故か相手の天狗は途端に素直になった。
そうか、なるほどとか、相づちを打つような言葉を言う。
とても嫌な予感がする。
おかげで目が覚めたとか、おおよそ納得して貰っているのだが、
なにか重大な理解の齟齬があるように思えてならないのだ。
結局、「ありがとうございました。」と礼で言われ受話器を置いた。


この天狗、借金取りの天狗たちの間ではネット天狗と言われているそうで、
ネットの情報を転載して小銭を稼いでいる奴という認識らしい。
売れるかどうか判らない、しかも新聞勧誘お断りと言われている天狗たちに比べればよっぽど手堅いと
思うのだが、天狗たちの間では決して評価されているわけではない。


何か取り返しの付かないことをしたような気がしつつ、コーヒーを飲みながら外を眺めたら
ものすごい強風で驚いた。 私にはそれがクソ天狗どもが巻き起こす強風に見えて仕方なかった。