□月 ●日  No1370 運が良かったとも言う


顕界で通る言葉が幻想郷で通るとは限らない。
というわけで、うちの同僚からこんな話を聞いた。


あまりに理不尽な要求をしてくる妖怪に小声でこのどブスがと言ったら
相手にきょとんとした表情をされたという。
流石にまずいと思って、しどろもどろになりながらも釈明したそうだが
相手にさらりと「強心剤のことですね」と言われたという。
お陰で理不尽な要求は忘れられたようだったが、今度は
強心剤の意味が分からず聞いてきたという次第。


ブスという名前の強心剤があるということなので
薬の蘊蓄に詳しそうなブレザー兎に「ブス」について聞いたら
今度は逆に怒られた。 こちらは外見の話をしたわけではない。 
こっちが知りたいのは薬としての「ブス」である旨を説明して相手を落ち着かせた。


結局ブレザー兎もきちんと説明できずに横から割って入ったメランコリーが答えてくれた。
どうやら「ブス」とは「附子」すなわち「トリカブト」のことだったらしい。
なるほど、トリカブトと解釈されたら当社で扱う商品と思われてもおかしくない。
相手にとっては薬がどうかしたのかと言ったところか。


幻想郷の場合は特に魔法使いや旧地獄市街と関係性が深いことからブスと言われたら
真っ先にトリカブトが連想されてしまうと言う。
もちろんトリカブト自体は危険な薬草である。 メランコリーの話しでは
弱毒化加工をしてから薬として利用するのだとか。


朝倉にその辺の話しをしたら、声を出して笑っていた。
ちなみに我々が使うブスというのはトリカブト中毒で顔面がこわばってしまった
状態のことだという説があるらしい。


「私には縁遠い言葉だけどね」というフレーズを何故か力一杯言っていたが
お前は魔法使いじゃなかったのかと思う。
今後、何かのネタに使いたいところだ。 
勿論誰かに言わせる予定。 ピコぽんハンマーは殴られると結構屈辱だからだ。