□月 ●日  No1448 慈悲はない


幻想郷には小さな幸せも大きな不幸も同居している。
それに抗う者にも無慈悲に襲いかかる。 
弾幕戦に巻き込まれるというのはそういうことだ。


目の前で見たのは元々人間だった氷のオブジェだ。
時間が経過すれば解凍され遺体だけが残るであろう。
蘇生は不可能であると言える。


そのオブジェを取り囲むように子供が泣いている。
彼らの運命がどうなるかを考えると心が痛いが、彼らを助ける手段はないのが実情だ。
近所の人間が集まって、子供達の親類を調べる作業が始まっている。
私が入り込む余地はないと言ってよい。


弾幕の高機能化により、周辺への破壊被害が拡大している。
その結果、人間が巻き込まれるケースも増えており、事態は悪化していると言って良い。
厄介なのはやはり妖精達の喧嘩だ。
連中は際限なく能力を発動するので気がつくとどうしようもない事態になる。


この日妖精が弾幕に干渉するというケースが目撃された。
朝倉の話では天狗のカメラと同じ物だと言うが、妖精の場合はマジックアイテムなしで
起動するすることができるという意味でかなり危険である。


このオブジェの元、弾幕に襲われていた地点で命運は尽きていたと思う。
被弾すれば体中に穴が空いて見るも無惨な姿となるであろう。
だがそこに雹弾が干渉したお陰で肉体はキレイなまま保管されることになった。
これを喜ぶべきかどうかは分からない。


私が今回書いたことによってこの人達が救われることもない。
同情して何かを与えたところで数日間命を繋ぐのが関の山だ。
根本的な解決にはならない。
私に出来ることと言えば、妖怪退治をやっている人を紹介する程度だ。
そんなところだ。