□月 ●日  No1449 既視感


送り盆。 毎度の事ながら酷い乗車率。
うちの技術者がゆりかもめのようだと言っていたが、最近になってようやく意味が分かった。
これはまさに芋洗いという言葉が相応しい。
朝倉に連れられて行ったそこと確かに既視感を感じる。


列車にも乗車限界はあるので、係員たちと一緒に定員チェックをしながら仏さんを
列車に押し込んでいく。 
そう言えば押し込む仕事をしている人は朝倉がヘッドハンティングしたという
かなり手慣れた猛者である。


なにか多人数を制御する仕事でもしていたのかと一人に尋ねると、全くの異業種だったので
少しだけびっくりする。 結構てきぱきとまるで荷物を整理するかのように
待機列を作る。そこで待機している人のマナーは置いといても手慣れすぎる。


魂魄の話では朝倉が参加している某イベントのスタッフを何人か引き入れたらしい。
確か前日もイベントだったはずではないだろうか。 お疲れ様と言うしかない。
呼びかけに妙にユーモアがあったのはそのためだったとようやく理解する。


最近顕界土産を道ばたに捨てるマナーがわるい幽霊が多くて困る。
食べ物の袋からエロ本に至るまでバリエーションは多種多様。
三途の河でゴミを破棄されても困るというので、こちらで回収しているのだが
産廃代も相当馬鹿にならないと思う。 隙間送りにする分まだ安いといえるが。


産廃だけならまだマシかもしれない。
吐瀉物とか。固形物とかがあるとかなり萎える。
固形物というのは人間から排出されるかぐわしい臭いのアレのことだ。
つまり列の中で致してしまうということだ。 


幽霊はそんなものはしないと思うかも知れないが、この時期お墓の前はどこもかしこも
食い物ばかりである。 その辺のことを理解して貰わないと非常に困る。
具合が悪いことに仏様の中にはにおいを感じることが出来ない者も多い。
この重大なテロに対して咎める者が少ないのはとても困る。


一方で咎めた者に逆切れした幽霊が固形物を投げつける案件も発生した。
酷い既視感だが、一般人も幽霊も似たようなものだと感じ入る日である。
考えてみたら、あそこにいる人も死んだら幽霊だった。