□月 ●日  No1740 めたるな英雄


月面人というのは気まぐれな存在である。特にお互いにとって脅威となる相手に対しては
実に協力的だ。いや、地上の民に危険な任務を負わせて自分だけは高みの見物というべきか。


地球というのは外からみれば結構目立つらしい。狙ってくる奴らは月をスルーして
地球を目指してくれる。しかし、月の都にとって外敵にこの地球を占拠されるといささか面倒だ。
人間相手の方がやっぱり強く出ることができる。


そんなわけで宇宙の侵略者相手に月面人はと言うとテクノロジーをあげるというか
秘密基地を勝手に作ったり、なんかメタルなコスプレをさせたり、酷いケースでは
巨大戦闘機まで用意しているわけで、それは結構だが大迷惑じゃないかと思うわけで。
非想天則の原型を作ったのも月人という話なのでその辺はおおむね予測はつくのであるが
もう少しデザインとかをなんとかした方が良いのではないかと思ったり。


こんな話をしたのは月人の一人が私の状況を見かねたのか、変身ヒーローにならないかと
持ちかけたためで、試しに月の都で着てみたのだが。
着るために変身のかけ声をしないといけないとか、専用のポーズをしないといけないとか
振り付けを覚えるのに小一時間。


変身後動きは確かに良くなるのだが、バランスを欠いて前につんのめり
地面を大きくえぐってみるとか、ビームサーベルが実は門番たちが使っている標準装備と
全く同じとかいろいろ突っ込みどころは満載。
そんなものより飛び道具はないのかと聞くと出てきたのは豆鉄砲。もちろん十分すぎるほど
威力はあるのだろうが地味。 これは誤爆防止のためだそうなので仕方ない。


ひとしきり試して結論を言えば「ずばりいらない」だった。
弾幕に襲われたときに矢面に立って変身ポーズが取れるわけがない。
基本隠れてなんぼなのに、専用ポーズをとるしかない。 意味がない。
ので、泣く泣く諦めたわけでして。


一番致命的だったのは朝倉や妖怪相手に変身したって、笑われて終わりだということだ。
多々良小傘なら逆に驚かせそうだが、たぶん一回しか通用しない。